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合わない時間帯
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濡れた髪を乾かしてもらいながら、また寝てしまいそうになるのを堪える。郁が寝るまで起きていたい。
「眠いんだったら寝ろよ。」
「まだ勉強する。」
勉強する気なんてないけど、何もしてなかったら早く寝ろって言われそうだし。リビングのテーブルの上に置いていた勉強道具をキッチンのテーブルの上に置く。郁は、自分の分の晩御飯を作っている最中で、教科書は開いたものの料理している後姿を眺める。かっこいいなぁ。
「何で移動して来てんの。」
「一緒に居たいから。」
「ふーん。…勉強、難しい?」
「さっぱりわかんない。」
白米に、野菜炒めと玉ねぎの味噌汁。それが郁の晩御飯。でも俺が食べたのは、白米に目玉焼き付きハンバーグ、サラダと玉ねぎの味噌汁。…俺の方が豪華だ。昨日は、肉じゃがとほうれん草のお浸し、胡瓜と茄子の漬物、鮭の塩焼きと白米と、豆腐とわかめのお味噌汁。郁は、肉じゃがとほうれん草のお浸し、白米とお味噌汁。…自分の事には手を抜いているのが丸わかり。俺が料理出来たらいいんだけど…出来ないからなぁ。
「それだけで足りる?」
「店でまかないとかも食べたから、十分だ。」
「へぇ。まかないって何出るの?」
「今日はパスタだったな。」
何だ。心配して損した。そっか、バーだけどそういうのもあるんだ。初知り。じゃあ、逆に良く食べれるなぁ。パスタを食べたのに、これだけの量を食べれるんだから。やっぱ、若いから?
「勉強、するんじゃなかったのか?」
「…してる。」
「椎那は何になりたいんだ?」
「…決まってない。」
ちゃんと決まってないのに、外国語学部に進学した。4年生だから、それなりに学費も高い。しかも、学費は奨学金じゃなくて豹兄が全部払っていてくれている。もちろん、今こうやって何の苦労もなく過ごしている生活費も。豹兄は俺にバイトをしろと言わない。それに、俺になりたい将来がない事も知っている。けれど、豹兄は「今は勉強に専念したり、色んな所や体験をしてみてやりたい事を見つけたらいい。まぁ、バイトしてみるのもやりたい事に繋がるだろうけど。取り敢えず、大学を卒業出来るぐらいには単位取っとく事。それさえ出来たら、俺は何も言わないから。」…らしい。本当にそれで良いんだろうか。その言葉に甘えているのは俺だけど。
それに比べて、郁の家は大家族。だから、自分の分の学費を稼いだり俺に生活費や家賃を払ったりしてる。俺とは正反対の人間で苦労人。
「まぁ、それはそれでいいかもな。色んなものになれる。」
「そうなのかなぁ。」
そう言って、郁は食べ終わった食器を洗い始める。開いている教科書の文字を読むと、意味の分からない文章が、頭が痛くなるような量の文章が書かれている。…本当にやりたい事見つかるのかな。それに、外国学部に通って卒業したとしても、それに関係のある職業に就けるんだろうか。時々、それが凄く心配になる。流石に俺だって、多額の金を払ってもらっていると言う事に自覚はある。それと、感謝の気持ちも。だから、大学に通わせてもらっているのに、関係のない職業に就きたくないんだ。
食器洗いが終わって、歯を磨きに行く郁。俺は急いで、勉強道具を片づけて郁の後を追う。それを郁はわかっていたようで、笑いながら待ってくれている。
隣に並んで歯を磨いて、一緒に布団の中に入る。幸せの時間。一番落ち着く時間。
「明日の弁当はからあげな。」
「時間かからない?」
「下準備は出来てる。」
「そうなんだ。」
距離が近くなって、郁の匂いが濃くなって冷え切った布団の中なのに、郁の体温で温かくなる。背中に回された手。
「眠い?」
「…あぁ。椎那は?」
「俺も。」
「じゃあ、寝ろ。」
もっと、もっと。何時間でも。何日でも。郁と話していたい。それでも、睡魔はやってくるものでそうもいかない。
「起きてる?」
「…寝てる。」
「郁は何になりたい?」
「…料理関係につけたらいいとは思ってる。」
それを聞いてすぐに、寝息が聞こえ始める。…本当、眠りにつくのが早いんだから。暫く、郁の寝顔を眺める。ピアスの数…最近減ったと思ったのに、1、2、3、4、5、6、7、8、9...確か、11あったのが4つ減って…7だったのが2つ増えてる。郁は、全部自分で開けていると言った。俺は、テレビだったか誰かの話で自分で開けるのは自傷行為と同じだって聞いたことがある。郁は自傷行為をするような人じゃないけど。もし、俺が聞いたように自分でピアスを開ける事が自傷行為だったら…。
…何か辛い事でもあるのかな。それに、俺が関わっているのか。俺ばっかりが郁に相談したりしていて、郁から相談を受けた時ないや。…自分でも、頼りないとは思う。でも、恋人なのに頼られないのは結構悲しい。やっぱ、俺が関係してることだから言いにくいのかなぁ。郁に頼り過ぎているから。あいている方の手を握ってみる。もっと、しっかりしたら頼ってくれるかな。何をしたらいいけど、郁が少しでも楽になるように頑張ってみよう。
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