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女の人と離れたと思ったら、またさっきの先輩らしき人と楽しく話しながら仕事してる。…もしかしたら、その人郁の事狙ってるかもしれないよ。もしかしたら、厭らしい目で見てるかもしれないよ。ねぇ、何で俺が此処に居るのに、恋人が目の前に居るのに、他の人と楽しく話してるの?今だけでもいい。俺が居る時だけでも良いから、目の前で他の人と楽しく話さないで。
胸が、心臓が掴まれたかのように苦しくて、息をするのが辛くなる。何で、恋をするとこんなにも醜くなるんだろう。綺麗なままで居たい。普通で居たい。なのに、郁の事になると醜い生き物になってしまう。郁と話している人を殴りたくなる。…もしくは、殺したくなる。郁を俺の中に閉じ込めてしまいたい。誰にも、郁の存在を知らせたくない。この世で、俺しか郁の事を知らなかったら良いのに。もしくは、俺にしか郁が見えなかったらいいのに。そうしたら、俺以外誰も郁の事を好きにならないのに。こんな思いしなくてもいいのに。
男だから何。女だから何。子供が出来ないからって何。子供が出来るからって何。そんなのどうだって良い。好きなんだから。性別に関係なく、郁の事が好きだから良いじゃん。なのに、世間は同性というだけで批判する。…性転換したらしたで、また批判される。こっちだって、自分の意志で男に生まれたわけじゃない。…恋ぐらい自由にさせてよ。
「お待たせいたしました。」
そう言って、注文した物を運んできたのは郁ではなく、さっき楽しそうに話していた人。接客が上手そうな人。この人、郁の事好きなのかな。もし、本当にそうだったら俺に勝ち目はあるのかな。こんな醜い自分に勝ち目が。
「…椎那、見過ぎだ。」
注文した物をテーブルの上に置いて、一礼し、去って行ったさっきの人を見ていたら俊司に見過ぎだと注意される。そんなにも見ていたのだろうか。
頼んだリゾットを食べれば、Barじゃなくて普通の飲食店にすればいいのにと思うぐらいに美味しい。これを作っている人が、今日郁にイタリアンを教えるのかな。郁、料理を学びたいって言ってたから…もしかしたら、これを作った人の事を好きになるかもしれない。だって、リゾットだけでこんなにも美味しいんだから。
「お前は、あの人の何処が好きなんだ?」
「…全部。」
「全部以外。」
そんな事言われたらきりがない。見た目、声。料理が上手な事。全くと言って家事が出来ない俺の事を捨てない所。面倒見が良い所。苦労人だけど、愚痴を言わないところ。俺が助けてほしい時、助けてくれる所。まだまだ他にも沢山ある。
「俺に愛をくれる。悲しい時、寂しい時、傍に居てくれる。…口では嫌々言っても、優しい所。」
「…ふーん。」
「聞いておいて、その反応は辛い。」
「愛をくれるって、他の人でも良いのか?」
「…郁だけ。こんな俺の事、穢れた部分を知っても郁だけは俺を愛してくれる。」
俺が色んな人と穢れた、愛のない行為をしていた事を知っても、差はあるけれど好きだと言ってくれる。どんなに性欲に溺れても、好きだと言ってくれる。嫉妬して、1人で怒っても、最後には慰め、愛をくれる。
それが理由じゃ駄目なのか。好きに理由が必要なのか。俺は要らないと思う。
結局、俊司は俺に聞いておいて興味がなかったらしく、食べ始める。一体、何なんだ。
ご飯を食べ終わり、先に家に帰る。流石にずっと店で待っているわけにはいかないから。瑛太は、結構飲んでいた割に酔っているようには全く見えない。…まぁ、お酒に強そうだし。亜紀は、調子に乗って未成年のくせにお酒を頼んでいたくせに、酔っ払って潰れた。そんな亜紀を瑛太が連れて帰る。亜紀と瑛太は家が同じ方向だから。俺と俊司は別方向。暗い夜道、家までそう遠くはないものの、こんな時間帯に1人で歩くのは久しぶりだ。人通りがそんなにないせいか、少しだけ怖く感じる。郁はいつも、これよりも遅い時間帯に1人で帰ってきてるのに。
今頃、さっきの人と仲良く話でもしているんだろうなぁ。もしくは、お客さんと。…イライラする。あ゛―、四六時中監視したい。
何時に帰ってくるか、わからないからお風呂にも入らずベッドの上でゴロゴロする。いつも郁と2人で寝ているベッド。今日も一緒にこのベッドで起きて、このベッドで寝る。早く帰ってこないかな。1人は暇だ。帰ってきたら、おかえりって言ってただいまって言ってもらう。そして、抱き締められてキスを受ける。キスをすると、胸がきゅんとする。脳がとろけそうになる。セックスとキス。どちらしか出来なとしたら、俺は迷わずキスを選ぶ。それぐらい、俺にとってキスは重要なもの。愛されていると思えるから。
「すき。スキ。好き。大好き。…会いたいなー、もう。」
今さっき会ったばかりなのに、もう会いたい。数時間も、数分も、数秒でさえも会えないと寂しい。高校生の時に比べて、郁への好きはかなり大きくなって、溢れるばかり。高校生の時に比べて、余計我儘になった。
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