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合わない時間帯
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「…いな、椎那。」
弱く体を揺すられて、目を開ければ髪の毛からポタポタと水を落とす郁の姿。
「おかえりぃ…お風呂入った?」
「ただいま。あぁ、入ったけど。お前入らずに寝たのか?」
昨日されたように、また髪の毛をグシャグシャと乱される。…一緒に入りたかったのに。玄関でお出迎えして、抱き締めあってキスをしてお風呂に入るつもりだったのに…何で寝ちゃったんだろ、俺。
「どうした?」
「…一緒に入りたかったのに。何で起こしてくれなかったんだ。」
「帰ってきてすぐに風呂場に向かったからな。てっきり、椎那はもう風呂に入って寝てるのかと思ったんだよ。時間も時間だしな。」
そう言われて壁に掛けられている時計を見れば、もう曜日を跨ごうとしている。
「もう遅いし、明日の朝入れば?」
「…そうする。一緒に入ってね。」
「無理。朝は忙しいからな。」
…そこは、いいよって言ってくれてもいいじゃん。俺が大学に入ってから、恋人らしい事あまりしてない。遠出しようにも郁はバイトをそんなに休めないと言って、出掛けられない。長期休暇の時だってバイト、バイト、バイト。休みの日は、生活用品とか食材の買い出し。お前は主婦か!!ってキレたいぐらい。それは、郁よりも時間に余裕がある俺がしておけばいい事なんだけど、俺が料理するわけじゃないし、家事をするわけじゃないから、何を買ったらいいのか全く分からない。…だから、直接本人に文句を言う事も出来ず、ずっと1人心の中でキレている。
遊びたい。沢山遊びたい。だって、お互い就職したらもっと一緒に居られなくなるんだよ?休みが重ならなかったり、勤務時間が違ったり。だから、学生のうちにいっぱい遊びたい。そう子供みたいに我儘な事を考えているのは俺だけ?
「…俺も、手伝うから一緒にお風呂入って。じゃないと、犯す。」
「何。そんなに入りたいわけ?…犯すって、立場逆だろ。」
「入りたい。」
「はぁ…。わかった。けど、いつもより1時間は早く起きろ。」
「うん。」
5連勤だからなのか、疲れ切ったように髪を乾かさないまま俺を抱き締めて目を閉じる。このまま、過労死してしまうんじゃないかっていうぐらい郁が休んでいる所を、暇している所を見た事がない。
「郁は、死なないよね。」
「…急に何。」
「俺を1人にしないよね。」
「…お前が俺を裏切らなかったらな。」
“裏切り”…あぁ、確かに去年、俺は郁を裏切った。…そう。まるで今みたいに、郁が他の男と居るのと見て勝手に浮気したと決めつけた。本人に聞きもしないで。そして、俺は何日か繁華街で寝泊まりした。でも、いざとなって援交しようとすれば、郁の事が脳裏に浮かんで出来なかったんだ。結局はしてない。けど、裏切ったのは事実。半ば無理矢理に郁の人生を奪い取っておいたくせに、自分勝手に行動した俺は馬鹿。
危うくまた、同じ事を繰り返そうとしていた。
「…今日、仲良く話してた人ってさ。」
「ん?」
「ゲイ?」
「いや、女好き。何、浮気してると思ったのか?」
「…はい、そうです。」
「阿保。」
グイッと頬を引っ張られる。
だって、不安になったってしょうがないじゃん。一緒に住んでいても、朝とか昼は会えないようなもんだし。歳の差だってあるし。自分に自信があるわけでもない。それに、あの人はカッコいい人だった。もしかしたら、郁はどっちかと言えば可愛い系の俺よりもカッコいい系の人の方が好きかもしれないとか思ったり…とにかく不安がいっぱいなんだよ。
もちろん、郁の事は好きだし、今こうして恋人で居られる事が幸せだよ?でも、その期間が長い程好きが増えていくのに不安も増えていく。
「ちゃんと俺はお前の事が好きだから、安心しろ。」
「…本当に?」
「あのなぁ…好きじゃなかったら、こうやって一緒に寝たり風呂に入ったりしねぇよ。で、もう寝ていい?」
「あ、はい。」
眠たいせいか、若干不機嫌な郁。…確かに。そうだよね。好きじゃなかったら、こんな面倒くさい俺なんかと一緒に居られないか。
寝始めた郁の寝顔を見ようにも、抱き締められているから見る事が出来ない。それに、郁は寝顔を見られるのが嫌いだと言っていた。一回、こっそり寝顔の写真を取ったらバレて、速攻消された(他の隠し撮りも全部)。そして、その後お仕置きを食らった。…あれは酷かった。本当に鬼だと思った。
郁の手をペタペタと触る。俺とは違う、男らしい手。骨がゴツゴツしてる。けど、綺麗な手。きっと、これが女子が良く言う好きな手なんだろうな。料理したりするせいか、爪はちゃんと切られていて短い。少し、深爪気味の爪。自分の手と重ね合わせたり、指を絡めて見たり、わからないけど手相を見たり。さっき、少し寝たせいか眠くない。郁は寝てしまったわけだし、話し相手はいない。勉強をしにいこうにも、抱き締められているから身動きが取れない。仕方なく、郁の胸に耳を当て心臓の音を聞く。…音楽とかよりも一番好きで落ち着く音。うん、これなら寝れそう。
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