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空っぽの世界~要過去編 ~
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早くにぃに会いたい、俺はそればかり考えていた。
例えどんな姿に変わっていようとも、兄は兄だから。
俺は家へと走った。
「ちょっと君、!待ちなさい!」
と、俺を止める警察官を無視してスルスルとテープをくぐり抜ける。
ドアを開け乱雑に靴を脱ぎ、兄の最後の姿を見た風呂場へと向かった。
だが、そこにはあの時の光景が嘘だったと言わんばかりに綺麗で何も無い浴槽と床があった。
急いで廊下に引き戻り、警察官が玄関まで来ていたがお構いなく、リビングの扉を勢いよく開け放った。
俺にはそこで兄が「おかえり」と笑顔を向けている姿が一瞬だけ見えた気がした。でもそれはあの時の、まだ兄が壊れていなかった頃の素直で真っ直ぐな兄の笑顔を写した遺影だった。
ゆっくりと兄の遺骨の箱に手を伸ばしそれを抱きしめた。
驚くほど軽くて、でもズッシリと強い存在があって、命の儚さを感じて、俺はその場でとうとう泣き崩れた。
「ッあ…かなえに、ぃっ!ぃにぃいぃ…っくぁぁあ…ぁぁやっ、だ、にぃいぃっ…!」
俺はもう戻らない大好きだった兄を何度も何度も呼び続けた。戻ってこないと理解してるのに、でも、呼べば戻ってきてくれる気がして、何度も何度も…
警察官も親族だと理解してくれたようで、静かにこちらを見ていた。
......................................................
それからの俺は、ぼーっとしていることが多くなった。
クラスメイトには心配されたが、俺はただ兄のいない世界が酷く空っぽに思えて。
自分の中にポッカリと空いた兄という名の空洞を埋めたくなった。
俺は、ただそれだけ
兄の存在を忘れたくて、忘れなきゃおかしくなってしまうから、悪に手を染めた。
夜遊びにふけ、無免許運転、暴力沙汰、万引きと、何回か警察のお世話になったりもした。
喧嘩に明け暮れる毎日が兄の存在を忘れさせてくれる気がして。気がつけば俺の周りからは人が居なくなっていた。
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