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いちご味のパン
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するとえいとさんの長い手が伸びてきて
俺の口に付いたジャムを取ってくれる。
「これからもっと笑ってほしいな」
俺にはそんなこと言われたの初めてで…
それは言葉に表せないくらい嬉しくって
頑張って笑顔を作ろうとしたけれど…
なんでだろう。鼻の奥がつん、として
俺の目からは涙がこぼれてしまっていた。
持っていたパンを自然にお皿に戻し、
止めなければ。と手の甲で涙を拭う。
「ほら、泣くなって」
えいとさんが頭をたくさん撫でてくれる。
「うぅ…ごめんな、さっ…今、笑顔…するうっ…」
「流石に今はできないだろ。いつでもいいから」
優しい顔が目の前に映る。
俺は視界がぼやけながらも大きく頷いた。
「翠は泣き虫さんだな」
確かにそうだ。施設でも泣きっぱなしだったし、
正直この家に来てからも泣いている。だから否定
できなくて、今こうして涙を流し続けている
自分が恥ずかしくなる。俺はさらに懸命に
手の甲で目をごしごしと擦った。
するとえいとさんが俺に問いかけてきた。
「どうする?まだ食べれるか?」
俺はまたいちご味のパンに視線を落とす。
せっかく出してくれたものを残してはいけないし、
正直、まだ食べたかった。一息ついてから答える。
「…食べ、ます…」
「本当か?無理しなくていいよ」
そう心配して言ってくれたが、
俺は首をぶんぶんと振った。
「えいとさんのごはん…好き、なので…」
俺が後から一言添えると、えいとさんは
頬を少し赤くして一瞬だけ目を逸らす。
えいとさんは
「あ…ありがとな。こんなもんしか作れないけど」
と言った。
─俺、やっぱりワガママだ。
えいとさんといっしょにいたい…
ってどうしても思っちゃうんだ。
そんな俺を、神様は許してくれないかな。
俺とえいとさんは再び、テーブルに手を伸ばした。
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