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心的外傷 【一樹 Side】
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あれから一週間程が経ち、錦からもう退院して良いと
言われた。と言っても小夜の食欲がよくなった訳では
なく、傷が段々と回復してきたそうだから
こんな狭苦しく居心地の悪い病室なんか抜けて、
俺の家でゆっくりと体調管理をしてくれたら良い。
…というのが錦の所論だった。
錦が傍にいてくれないのは何かと心配だけれど、
奇遇にも瑛斗さん…瑛斗のマンションは近く。
だから、何かあった時は手を貸してもらおう。
…今は持ってきた自分の車に小夜を乗せて
家に向かっているのだが、特に会話もなくさっきから
エンジン音だけが車内に響いていた。話題を
出そうとも思ったが小夜は助手席から窓の外の
眺めをじっと見ていたので俺は再びハンドルに
目線を戻すことにした。
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家に着き、車のドアを大きく開ける。
「着いたよ」
小夜は相変わらずの不満気な表情で車から降りる。
地面に重心をかけたと思うと体がふらっと揺らついて、
慌てて小夜の体を支えた。
「おっと…」
すると小夜はすぐに一歩下がり車のドアに縋り付く。
身体に力が入らないのは無理もない。小夜は
病院でほぼ水分しか取らなくて、一日中点滴状態
で過ごしていたんだから。なら抱いて行くか。
「じゃー、はいっ」
俺はしゃがみ込み小夜に向けて腕を広げた。
すると小夜が睨みつけた。うん、わかってたけども。
「しなくていい」
「だって体ちから入んないだろ?」
「…自分で歩けるし」
本当、強がりだなぁ。思わず溜息がふっと出てしまう。
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