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可愛い甘え
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このままだとまた泣いてしまいそうだ。
「ごめんな、言わなくていいよ」
そう言うも翠はちがうの、と首をぶんぶん振る。
「だから…だからえいとさんがっ、
言ってくれたこと…嬉しい、くて…」
「…それで泣いちゃったんだな。
その泣き虫さん、いつか直さなきゃな」
「い、今は泣いてないっ…の」
「うん、そうだね」
それから瞼が次第に落ちていき、
寝室には静かな寝息が響いた。
小さく縮こまり、気持ち良さそうに眠っている。
そんな可愛い寝顔を見ていたら、先ほど翠が
―周りはいつも見た目の事しか見てくれなかった。
と言ってくれた言葉が頭を過った。
見た目の事…つまり内面ではなく、外見。
本当にそうだったのだろうか。少なくともあの
施設の連中は翠の事を人間扱いしなかった
とんだ最低な奴だったが、これまで翠が出会った
全ての人に罵られてきたのか。本当に、誰一人と
翠の事を考えてあげた人はいなかったのだろうか。
俺はまた、翠の寝顔を見る。
いや、極僅かでもいただろう。こんなにも単純で
素直な性格をしているのだから。…が、瞬時に思った。
もしかしたらその翠の性格を利用されて、
裏切られた事もあるのかもしれない。そんな事が
あったのかもしれないと思うと、酷過ぎる。
…こんな小さな身体で、よく独りで耐えてきたもんだ。
翠の柔らかい髪をふわりと撫でる。その口元はそっと
少しだけ緩んだ。
「泣いてばっかだけど、強いんだな」
ぽつりと呟く。
俺は翠の事、過去の事を
全然知らないし、分かってもいない。
けれど…けれどこれだけは思うんだ。
その予想も出来ない重い過去を、
これから埋めていってあげたい…って。
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