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今では遠い幸せ
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そしてお母さんと二人でお寺まで来た。
その場所は緑に囲まれていて、木々の間を
風が通り抜けていく音が聞こえる。周りを
キョロキョロと見回しながらも、お母さんに
置いていかれないように早足で歩いた。
すると、お寺の中から和服を着た男の人が出てきて、
こちらに歩み寄ってきた。俺は少しお母さんの
陰に隠れる。
「この子です」
お母さんがそう一言だけ言うと、和服の人は
俺を見て、少し驚いた様に目を開いてから
分かりました、と言い頷いた。
「それじゃあ…ね」
お母さんが俺に言った。
…え、もう?
それでも俺は頑張って頷く。
お母さんが、笑顔だったから。
その隣で和服の人も
大丈夫だよ、とでも言うように
微笑んだ。…優しそうな人で良かったな。
もしかしたら、上手く過ごしていけるかもしれない。
そしてお母さんが戻ってきたら、思いっきり
抱きつくんだ。それまで少しの辛抱。
お寺から出て行くお母さんの後ろ姿を
俺は見えなくなるまでずっと見つめていた。
─この時点で気づけって話だよね…
本当に、俺は馬鹿だ。
すぐに騙されるんだ。その笑顔に。
もし俺がこんな性格じゃなかったら
なにか変わっていたり…したのかな。
この時、まだ幼かった俺は
『笑顔』には裏もあることなんて
知るわけなかった。
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