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笑顔の裏は真っ黒
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「そう。明らかに人間のものでは無い耳、尻尾…
身体の半身が犬の様な姿、心を持っている者の事。
非常に珍しい」
俺…犬子っていう生き物なんだ。
それは知れたが、不思議に思う事があった。
「なん、で…犬子は、
居ちゃいけない…の?」
お母さんにはそんな事言われなかっ…
あ…だめだ。
名前を頭に思い浮かべただけで、あの優しい顔が蘇る。
─お母さん。
会いたいよ…
この人と過ごしていくなんて、
出来ない…かもしれない。
…ごめんなさい。
「といっても、犬子が人々から
避けられるようになったのは最近でね」
つづるさんは淡々と話し出す。
「それは、君の様なある一匹の
犬子がきっかけとなったのだよ。
その犬子は最初、何事も無く暮らしていた
ようなのだが。ある日そやつは狂った様に牙を
向き出し、一人の人間に大怪我をさせたのだ。
そこから、犬子という者は最終的に
化物と化してしまうと世間に伝わった…という事だ」
省略されたらしい話を
一度で聞き終え、ぞっとする。
けれど、その俺と一緒の…犬子が人を怪我させて
しまったのは何か理由があるのではないか…とも思う。
突然暴れるなんて、不自然だから。
「その子は…どうなったん…です、か…?」
「弾をくらいましたよ。危険で近づけなかったようで」
「っ……」
思わず息を呑む。
そんなの…酷い。何も話さえしていないのに
殺してしまうなんて、撃った人はなんて残酷な
人なんだろう。
そしてよく考えてみたら、今の自分もそれと
似たような立場に至ることを認識し、体中に
寒気が走った。おまけに震えも止まらない。
前に目をやると、気づけば
つづるさんの手には木刀が握られていた。
嘘、だよね…?
嘘なんかじゃない。分かってる。
だってつづるさんは間違いなく、
俺に近づいてきているのだから。
けれど、冷静になんていられなくて、
怖くて怖くて仕方がなく、俺は懸命に否定する。
「や…だっ…いや…!」
後ろに縛られた手首を擦るように動かしてみても
…やっぱり取れなかった。
もう、どう足掻いても逃げられない。
「…君も、狂い出す前に
手も足も出ない様にしなくてはね」
そして彼は手に持つ木刀を
俺に向けて振りかぶった。
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