アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
午後だけの留守番 【小夜 Side】
-
「冷蔵庫のやつチンして食べるんだぞ?」
「それさっきも聞いたから」
「絶対家から出ちゃいけないからな?」
「分かったって!」
昼ご飯を食べた後、一樹の動きが慌ただしくなる。
そう、仕事に行く日らしい。
一樹の仕事は日によって出勤時間が違っている
らしく、今日は午後からだと聞いた。だから少し
バタバタとしていた。
それにしても、さっきから一樹は同じことを
念を押すように嫌というほど言ってくる。
確かに俺は今日初めてこの家に一人になるけれど
別に何とも思わないし、どんだけ心配性なのかと思う。
俺は一樹みたいなバカじゃないんだから
そんなに何度も言われなくても分かるってば。
ムッとしてそう言ってやりたかったけど流石に
今は支度で忙しいんだからと口を噤んだ。
「そんじゃ、行ってくるな!帰って来るのは夜中かな」
俺はリビング、一樹は玄関と離れているから
聞こえるようにかやたらと声を大きくしている。
俺は了承するように頷いた。
なのに、そのまま外に立ったままドアを閉めない。
…何やってんの?
そして謎の間が空いた後
一樹は少し困ったように小さく笑い、
「俺以外の人が来ても出るなよ?」
と言い残しドアをガチャンと閉めた。
うん、今の間。一樹が言わんとしていることは
分かる。あれを言って欲しかったってのは。
だけど、何故だか言えなくて、言いづらくて。
何でだろう。たった一言なのに、
俺は日常的に使うような言葉を色々と言えない。
そんな自分に、ひとつ小さなため息が出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
76 / 204