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高鳴る心
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「おおっ…!」
「…?」
結論、めちゃくちゃ似合っていた。
これは正解だったよ。うん、間違いなく。
「ピン…留め?」
「うん!少し心配してたけどやっぱなづなには
めっちゃ似合ったな!それあげるよっ」
「…ありがとう」
なづなの頭にはてなマークが浮かんでいる。
そりゃそうだよな。突然前髪にピン留められる
なんて訳わかんないもんな。
「…でも」
するとなづなが俯いた。どうしたんだ?
俺は話の続きに耳を傾けるため、顔を覗きこむ
ような形で首を傾げた。
「返すよ。そんなことしたら、秋の物なのに
僕のせいで汚れちゃうから」
そう言い切ると留めたピンを外そうとした。
…そんなわけないじゃん!
俺はなづなの言葉が凄く引っ掛かり、ブンブンと
首を横に振った。
「っ…!汚れたりなんかしないよ!
なづなは綺麗なんだから!全く汚くなんかない!」
ついむきになってしまってバッと言ったけれど、
文字通りだよ。だってそうじゃないか。
嘘なんて、一言も言って無い。
なのに、なんでこんなにもなづなは自分自身を
嫌うようなことを言うのだろう。
…もしかしたら、誰かにそう言われているのかも
しれないという不安さえ過ってしまう。
「というか、そのピンをあげたいって思ったのは
俺なんだから遠慮しないで貰ってくれっ」
そう言うと、なづなは一瞬目を丸くして暫く
黙っていると、こくりと頷いて前髪に添えて
いた手を下ろした。
この時、ほんの僅かに微笑んだ気がしのは
俺の気のせいだったのだろうか。
でもそれは一瞬で、瞬きをした頃には元の
表情に戻っていた。少し見るタイミングが
遅くて、心の中の俺はガックリと手を突く。
でも!ピン留めを持って来たことは正解だったよね。
なづなは表情を変えないから注意していないと、
今どういう気持ちなのかが普通の人よりは分かり
にくいから少し難しいけれど、これは喜んでくれた
のが分かった。
その度に、俺はどうしょうもなく嬉しくなって…
何でだろう。いつか父さんにプレゼントをして
喜んでくれた顔を見た時も嬉しかったけれど、
これほどじゃなかった。きっとなづなが今まで
出会った人と違いがあるからなんだよね。
それは、なづなが『友達』だから?
それとも俺と同じ『犬子』だから?
不思議だなぁ、この気持ち。
俺、どうしちまったんだろう。
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