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(なんで……何でこんな所にいるんだ?)
思いがけない彼の登場に、動揺して言葉が出ない。
「すげぇな、あれ。入口ごった返してるぞ。朝の満員電車並みだな。あ~あ、木下くん、姉様方に揉みくちゃにされてねーか?」
呑気に頬杖をついて、木下さん周辺の様子を面白がって実況しながら笑う、同期の声が、すごく遠くに聞こえる。
部屋の入口で皆に取り囲まれた木下さんは、困ったような、照れたような、そんな笑顔で、周囲の人達と話をしていた。
目の前で繰り広げられる情景が、すごく遠くに感じられる。
彼は、何層にも透明な壁に隔たれた向こうの、別世界の人で。
かつての上司である木下さんは、もう俺には手の届かない存在なのだと思い知らされているようだった。
今や別の部署に所属している木下さんだが、女子社員の熱い要望と、それを伝えに来た幹事の懇願により、わざわざ足を運んでくれたらしい。
久しぶりに目にする木下さんの穏和な横顔が、とても愛しくて……胸が、鈍く痛んだ。
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