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(木下さん!)
足が勝手に動いていた。
鳥居に吸い込まれていく人ごみを掻き分け、手を精一杯伸ばして木下さんの腕を掴む。
木下さんはすぐさま振り返り、俺を見た。
「柘植、さん?」
「ち、違うんです!あれは、違うんです!」
「えっ?」
目の前の木下さんは物凄く驚いているようで、信じられないものでも見たかのように俺を凝視している。
「誤解なんです、だからっ」
「ちょっと待ってく…」
「迷惑なのは分かってます!でもっ」
「大丈夫だから、落ち着いて」
両肩をギュッと掴まれて、ハッと我に返る。
「あっ……す、すみません!」
慌てて頭を下げると、そのまま拳を握りしめた。
恥ずかしい。
身体中が熱くて堪らない。
(一方的に取り乱して、俺は一体何をやってるんだ!バカか、俺は!)
「話を聞きますから、少し待っててもらえますか?」
自己嫌悪に陥っていると、頭上から優しい声が聞こえてきて思わず顔を上げる。
すると、柔和に微笑む木下さんの姿が間近にあって、咄嗟にビクついて後退りをしてしまった。
「あっ」
「……連れの者に事情を話して来ますので、あちらの自販機の所でお待ちいただけますか?」
少し寂しそうに微笑みながらそう告げた木下さんは俺が頷くのを確認すると、鳥居の下へと続く階段をかけ降りて行った。
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