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「それで、話というのは?」
そう言って振り返った木下さんには表情がなくて、すごく驚いた。
見慣れた笑顔でもなく、時折見せていた慌てた顔でもなく、あの日の最後に見た寂しそうな顔でもなく
木下さんは、何故か無表情だった。
「え……あ、その……」
(さっきまで微笑んでくれてたのに、なんで……?あ、もしかして、自販機の前で見た俺のあまりにも情けない顔に呆れてものも言えないとか)
「違う、とか、誤解、とかおっしゃっていましたが?」
初めて見る彼の無表情にたじろいて返答出来ずにいると、言葉を促すように木下さんが更に問い掛けてくる。
(あぁ!もうどうにでもなれ!)
「は、はいっ。あの人はっ、俺の姉で、あの子供達も姉の子で、俺の子ではありません!」
寒さと緊張で震える声を張り上げて、たどたどしい言葉で言い切った。
今更言う必要などないのかもしれない。
俺が子持ちではない事を主張したところで、もうどうにもならないのかもしれない。
むしろ、既婚者だと誤解させておいた方が後腐れなくて良かったのかもしれない。
でも、それでも。
「それ以前に、俺は結婚してません!」
それでも、ちゃんと伝えておきたかった。
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