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「…あ、悪いなこんな時間に」
日付が変わってたから電話をかけた相手は、友人で精神科医の芦屋美咲。
『大丈夫!どーした?櫻がこんな時間に電話とか珍しいじゃん。何?失恋とか?』
ヘラヘラと軽口を叩く美咲、仕事で疲れているだろうに珍しい俺からの電話に気を使ってくれているらしい。
「お前、最初は小児科志望だったよな?」
『え?あぁ、まぁ、そうだけど…』
「じゃあ、子供の診察ってできるか?」
『はぁ?』
ヘラヘラしていた美咲の声が怪訝なそれに変わる。
『別にそんなの俺じゃなくたって近所の診療所にでも連れてけばいいだろ』
研修医の時期、研修先の小児科で何かあったらしい美咲の声が低くなる。
やっぱりか…
でも、今頼れるのはこいつしかいない
「近所のごみ捨て場に、子どもがいた。身体中傷だらけで…声も、出ないみたいでさ…」
『それって…今はどうしてる?』
「とりあえず風呂入れて飯食わせて、さっき眠ったとこ。なぁ、診てやってくれ。頼れんのお前しかいねぇんだ…頼む。」
目の前にいない相手に向かって頭を下げる。これで美咲に断られたら本当に頼れる人がいない。
ダメもとで病院に連れて行って施設や万が一親の元に帰されたりでもしたらと思うとそんなことは出来ないし
なによりよつばは俺といることを望んでくれたから、それを叶えてやりたい。
『…っ、はぁ…わかった、今家からそっち行く、待ってて。』
美咲は諦めたようにため息をついたけど来てくれるらしい。
良かった…と扉に寄りかかると微かに鼻をすする音が聞こえて
俺は慌てて寝室に戻った。
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