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「…っ!?」
洗面台の淵に座ったよつばが足元を見て目を見開く。
さっきよつばが入れた液体は泡風呂の素。
ある程度泡が立ったあたりでお湯を止める。
「どうよ、ふわふわもこもこだろ?」
目をキラキラさせながら泡をつんつんしているよつばは笑顔で首が取れるんじゃないかってくらい首を縦に降った。
ちょっと下手くそだけど、この下手くそな笑顔はよつばが本当に嬉しい時にする顔だとこの短時間でわかったから。
見ているこっちも嬉しくなった。
手に少し泡を乗せてよつばの顔目がけてふーっと吹きかけると目をぎゅっと瞑りながらキャッチしようとする。
ぱんっと閉じた手の中を恐る恐る見て泡がないことにちょっとしょんぼりしながらをくつくつ笑うよつば。
そんなよつばから笑い声が聞こえる事はない。
こんなに楽しそうなのに、笑い声が聞こえない。
聞こえるはずの、子供特有の甲高いキャッキャッとした笑い声。
それが聞こえない事に少し胸が痛む。
こいつの笑い声を聞ける日は来んのかなぁ。
ふと寂しくなった。
こいつの中から植え付けられた恐怖が消えて、腹の底から笑い声を上げられる日は来るのか?
手の上に泡を乗せて何かを作っているよつばに視線を落とす。
本当によつばの声を聞ける日は来ないかもしれない。
だけど俺は、よつばの声が聞きたい。
何年かかるかわからない。
もしかしたら俺が死ぬ直前かもしれない。
それでもいい。
よつばに声を出させてみせる。
そう決心していつの間にか泡だらけになっているよつばの顔に触れるだけのキスを落とした。
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