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湧き上がる怒り
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「太陽!」
突然、背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、目を見開いた龍樹の姿。
親衛隊員たちは、いつの間にか姿を消していた。
龍樹の姿を見た途端、怒りがこみ上げ、涙が溢れだした。
──こいつも、紗智を傷つけた。
確かに龍樹は紗智を傷つけてきたけど、今、紗智を傷つけたのは龍樹じゃないし、紗智を助けられなかったのはほかでもない、俺だ。
龍樹のせいにする事で、紗智を助けられなかったという自責の念から逃れたいだけだ。
そんなことは分かっている。
分かっているけど、どうしても怒りが抑えられない。
──紗智は、龍樹を誰よりも大切に思い、龍樹の為に傷つき続けてきたのに。
龍樹を見ていると殴りかかってしまいそうで、すぐに目を背けた。
野次馬から状況を聞いたらしい龍樹が、怒りをはらんだ声で小さく呟いた。
「太陽を傷つけた罰が当たったんだな。」
その言葉を聞いた途端、押さえ込んでいた怒りが一気に溢れだした。
──何も知らないくせに……!
紗智が、お前のために、体を張って制裁を止めようとしたこと。
お前にどんなに蔑まれてもへらへら笑っていた紗智が、その後にずっと泣き続けていたこと。
「龍樹様のお手を煩わせるわけにはいかないから」と言って親衛隊内の揉め事を、全部たった一人で収めようとしていたこと。
紗智の事なんて、何も知らないくせに。
何も、見ようとしないくせに。
どうしてお前なんかが……!
……紗智を傷つけたお前が、そんなことを言うな!!
いつの間にか、涙はすっかり止まっていた。
湧きあがった怒りが、体を突き動かした。
「紗智はそんな事してない!もう紗智を傷つけるような事言うな!!」
周囲に聞こえるような大声で叫び、俺は急いで階段を駆け降りた。
泣いている暇も、龍樹の相手をしている暇も無い。
紗智が、今も倒れているんだ。
「紗智!目を開けてくれよ!紗智っ……!!」
紗智は、目を閉じたまま、俺の声にも答えなかった。
俺は、救急隊員が来るまで、ずっと紗智の名前を呼び続けていた。
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