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連絡先〜皇雅side〜
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side:皇雅
「矢吹くん、ありがとう。とっても美味しかったよ」
俺は何故か、そう言って微笑む篠宮の顔から目が離せなかった。
その顔は、まるで幼い子供のような純粋な笑顔で。
また少しだけ、胸を締め付けられたような気がした。
その後も篠宮は、何かというと俺に笑顔で話しかけてきて、毎回その表情に戸惑ってしまう。
──こんな顔もできるんだな。
以前の篠宮は、いつも何かをこらえたような、辛そうな顔をしていた。
俺はその表情を見ても何とも思わず、いや、見て見ぬ振りをしていた。
こいつは太陽を傷つけたんだから、傷つけても良い、と。
考えることを放棄して、ただ篠宮に怒りをぶつけていた。
そんな過去の行いを今更後悔しても仕方がない。
過去の罪を悔やむのではなく、これからどうやって償っていくか。
とりあえず、篠宮とちゃんと向き合うことから始めなければ。
「なあ篠宮。俺たち同じクラスなんだし、連絡先交換しようぜ」
酷く緊張しながら言った言葉は、簡単に受け入れられた。
携帯に入った俺の連絡先を見て、篠宮は再び笑顔を浮かべた。
「そういえば、ちゃんと誰かと連絡先交換するのって、初めてかも。太陽くんは携帯持ってないから」
その言葉を聞いて、またしても苦い思いがこみ上げてくる。
俺たちが、篠宮からそんな当たり前を奪っていたんだ。
ちらりと横目で隣の様子を窺うと、会長も俺と同じように苦い顔をしている。
自分の親衛隊長なのに連絡先も教えずろくに話もしない。
最近の会話と言えばやってもいない制裁のことで篠宮を非難する言葉ばかり。
真実を知って、そんな自分の行動を後悔しているのだろう
。
俺たち高等部の生徒は、みんな篠宮を傷つけた共犯者だ。
俯いた会長の表情に自分達の犯した罪の重さを知り、再び暗い気持ちになるが、とりあえず篠宮と友達になる、という第一段階はクリアした。
──まだこれからだ。
自分の携帯に表示された篠宮紗智、という名前を見つめ、俺は小さく笑った。
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