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疑問
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しばらくたっても、一度感じた胸の痛みは、なかなかおさまらない。
目的もなく廊下を歩いていると、数メートル先に、皇雅くんの姿を見つけた。
僕は胸の痛みを振り払うように、皇雅くんに駆け寄った。
後ろから声をかけると、振り返った皇雅くんは、酷く驚いたような顔で、僕の名前を呼んだ。
皇雅くんと話していると、いつの間にか痛みは無くなっていた。
あの胸の痛みは、忘れた記憶を思い出したくない、という僕自身からのメッセージなんだろうと思っていたのだけれど。
だとしたら、どうして皇雅くんを見ても痛みを感じないんだろう、と病室で初めて皇雅くんと会ったときと同じようなことを考える。
伊集院先輩のことも、皇雅くんのことも同じように忘れているのに。
伊集院先輩を見たときだけ痛みを感じる理由──伊集院先輩と皇雅くんの違いは何なのか──。
考え込んでいると、目の前の皇雅くんに肩を叩かれた。
どうやら何度も僕のことを呼んでいたらしい。
何、と尋ねた僕に、皇雅くんは病室で見た悲しそうな表情とは全く違う、柔らかい笑顔を浮かべた。
「もうすぐ授業始まるから、一緒に教室まで行こーぜ」
皇雅くんと並んで歩きながらも、僕はずっと伊集院先輩のことを考えていた。
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