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本当の恋〜皇雅side〜
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side:皇雅
新学期が始まった9月1日。
俺は、今までになく学校を楽しみにしていた。
今日から、篠宮が学校へ来る。
以前のような失敗は、もう二度としない。
いつか篠宮が記憶を取り戻しても、あの病室で浮かべたような、純粋な笑顔を見せてくれるように、篠宮の、大切な人になれるように。
心の中で呟いたその言葉に、小さな違和感を感じた。
大切な人、というのは友人に向ける言葉ではないだろう。
それでは、一体──。
「皇雅くんっ!」
歩きながら考え込んでいた俺の数メートル先から、篠宮が駆け寄ってくる。
……あの純粋な笑顔を浮かべて。
この顔を見ると、胸が高鳴るのは……今まで感じたことのない、不思議な気持ちになるのはどうしてだろうか?
その後も、何てことない雑談の中で、篠宮は何度も俺に笑顔を向けた。
胸の奥がムズムズとする。
俺の知っている言葉で言うなら、居心地が悪い、という表現になるんだけど、不思議と嫌な気分はしなかった。
そろそろ教室に行かなきゃいけないな、と思い篠宮に声をかけるが、篠宮はボーッと空中を眺めたまま、何かを考え込んでいるらしく、数回呼んでも返事がない。
優しく肩を叩くと、篠宮は慌てたように俺の顔を見て、何、と答えた。
──可愛い。
肩を叩いた俺に気づいた瞬間の、きょとんとした顔を見て、俺は初めて人を可愛い、と思った。
太陽に「今日から友達」と言われたときに感じた高揚感とは違う、暖かいこの感情。
──ああ、これが本当の恋か。
篠宮の笑顔をもう一度見たいと思ったのも。
篠宮が学校へ来るというだけで、あんなに嬉しく思ったのも。
全部、俺が篠宮に恋をしていたから。
そう考えると、今まで悩んでいたことが急に馬鹿らしく感じられた。
篠宮は今は俺のことも会長のことも忘れてるんだし、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。
篠宮を傷つけたのは、会長だって同じだ。
──絶対に、会長より俺のことを好きにさせてみせる。
そう決意して、俺は笑顔で篠宮に声をかけた。
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