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謝罪〜紗智side〜
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side:紗智
僕は、皇雅くんと別れて、廊下を一人で歩いていた。
最近、皇雅くんの態度が、どんどん柔らかくなっている様な気がする。
特に、劇の練習を始めてから、急に雰囲気が変わったような……。
そんなことを考えながら教室へ向かっていると、突然伊集院先輩に声をかけられた。
胸を締め付けられるような痛み。
三度目にもなると、この痛みにも慣れてきた気がする。
前は逃げてしまったけど、今度は逃げずに先輩の顔を見上げた。
目があった瞬間、急に痛みが強くなって。
でも、嫌だ、とか、怖い、なんてぜんぜん思わなかった。
鼓動が速くなって、今にも胸がはちきれそうなのに、何だかとても幸せな気分になる。
……この気持ちは、何なんだろう。
僕が考え込んでいる間も、伊集院先輩は一向に口を開かない。
どうしたんですか、と訪ねると、先輩は我に返ったようなような様子で、改めて僕の顔を見つめた。
僕は黙って先輩の言葉を待っていたけれど、先輩は困ったような表情で僕の顔を見つめるだけで。
何から話そうか迷っているのかもしれない、と思った僕は、今の自分の気持ちを先輩に伝えることにした。
「先輩、この前は、逃げるようなことをしてしまってすみませんでした。病室で会った日から、僕は先輩の顔を見ると何だか胸が痛むんです。胸がドキドキして、痛いのに幸せな気分で。先輩のこと、何も覚えてないのに、心の奥から、何かすごく大きな感情が溢れてきて……自分でも、よく分からないんです」
この前のことを謝ろうと思っていたのに、気づいたら言い訳していて。
しかも馬鹿正直に自分の気持ちを話してしまった。
自分でも分からない、なんて言われても、先輩の方がどう返して良いか分からないだろう。
謝ろうとした僕の言葉を、先輩が遮った。
「それなら俺は、嫌われてはいない、ってことか?良かった……」
いつもの堂々とした態度からは想像もつかない、弱気な口調。
僕に嫌われた、と思って悲しんでいたのかな?
先輩は、さっきよりは少し落ち着いた様子で、それでもどこか悲しそうな顔で言葉を続けた。
「俺も、篠宮に謝りたいと思っていた。といっても、お前は覚えていないのだろうが」
言葉の意味が分からず、首を傾げた僕を見て、先輩はさらに顔を歪め、次の瞬間、思い切り頭を下げた。
「本当に、すまなかった。俺は、お前の気持ちを踏みにじって、お前を傷つけた。お前が覚えていないのは分かっているけど、どうしても謝りたくて──いや、謝ったことで、俺は自分自身をを許したいだけなのかもしれないな」
自嘲したような、先輩の言葉。
傷つけた、と言われても、僕はやっぱり何も思い出せなくて。
だけど、すまなかった、と言われた瞬間、痛みが少し和らいだような気がした。
もしかしたら、記憶を失う前の僕は、ずっとこの言葉を求めていたのかもしれない。
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キリのいいところまで……と思ってダラダラ書いていたら過去最長になってしまった……( ̄▽ ̄;)
2ページに分ければよかった、と書き終わってから気づきました←←
1ページがやたらと長ったらしくてすみませんw
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