アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
驚きの4
-
同期らから貰った紙包みの中に入っていたのは、鈴のセットだった。
乳首に挟んで着ける鈴が2個と、鈴付きの首輪が1個、尿道口に挿れると思われる、鈴付きの細長い針金が1個、それから多分尻に埋めるんだろう、コロンと丸い鈴が1個だ。
先月王都で例の店に寄った時には見かけなかった品だから、多分新商品なんだろう。動物シリーズも捨てがたいが、成程、こういうタイプも悪くない。
針金の類は王都では買うのをためらったのだが、こうして手に入ったからには、使えという事なのだろう。
さっそく夜、酒を飲みながら「同期からの土産だ」と、紙包みごと妻に渡した。
妻は中身を見るまでもなく、紙包みの色で不穏な気配を悟ったらしい。「これ……っ」と言葉を詰まらせた後、ぶんぶんと首を横に振った。
「却下です」
「まだ見てもないのに、何を言う」
ふふっと笑いながらテーブルの上に、紙包みの中身を空ける。ちりん、とかすかに鳴る小さな鈴は、なかなかの風情だ。
「鈴……?」
ちょっと怯えたように肩を竦め、妻がテーブルの上に恐々と目を向ける。
「ああ、お前に似合いそうだ」
小さな鈴のついた首輪を取り上げて、妻を抱き込み、白く細い首にさっとまとわせる。
ベルト部分が黒いから、白い肌にくっきりと映えた。
「あっ、ちょっ……旦那様っ」
妻が首輪に触れて、パッとオレを振り返る。その小さな動きに合わせ、ちりんと鳴る鈴が可愛い。
この様子だと、ベットで可愛がる時には他の鈴と相まって、更に激しく鳴り響くことだろう。それを想像しただけで、ふっと頬が緩んだ。
「レイ……」
妻の名を呼び、細い肩に腕を回す。
一方の妻は、他の鈴の用途に怯えているようだ。
「これ……何ですか?」
細い針金のついた鈴を指差して、震える声で尋ねる妻。
一瞬、説明してやろうかと思ったが、そうすると断固拒否されるのは目に見えている。
「ベッドで教えてやろう」
耳元で囁くと、妻の白い顔がカーッと染まった。
ぶんぶんと首を横に振りつつも、顔の赤いのは隠せない。
「知りたくない、です」
「遠慮するな」
「遠慮なんかじゃ……」
首を振りつつ、オレの腕の中からじりじり逃げてく妻の体を、腕を伸ばして引き寄せる。
こっちを振り向かせて唇を奪うと、妻の顔はますます赤くなって蕩けたが――残念なことに、誤魔化されてはくれないようだ。
「すっ、鈴は、勝負に勝ってからですっ!」
妻はそう言って、残りの鈴をぐいっとテーブルの向こうに押しやった。
勝負というのは勿論、妻と2人で行う剣の試合のことだろう。どちらかが先に2勝した方が、負けた相手に言う事を聞かせる3本勝負。
普段は従順で大人しく、オレの命に逆らわない妻なのに、この時ばかりは真剣で、殺気まで放って来るのが小気味よい。
その細腕の繰り出す剣はやや軽いが、その分スピードとキレがあって、このオレでさえ圧勝とは言い難い。
剣を構えた妻は、いつもの無防備な笑みを消して、冷たく無表情な顔になる。
凛と立つ姿には、見惚れずにはいられない。
ぞっとする程美しい、その真剣な様子が好きだ。時々冷静さを欠き、ムキになる様子も好きだ。
ムキになった妻を見て、可愛いなと笑っていると、すかさず隙を突かれてしまう。その油断ならないところも好きだ。
勿論、オレに勝負を持ちかけて、鼻息荒くしている今の様子も悪くない。
「いいだろう、受けて立つ」
オレはニヤリと笑い、妻を再び腕に抱いた。
「次の非番の日は、同期らを山のふもとまで見送りに行く予定だ。勝負はその後でいいか?」
「はい」
妻は神妙な顔でうなずき、「負けません」と拳を握った。
それにふふっと笑いながら、腕の中の妻を抱き上げる。無警戒だったらしい妻は、それに「ふあっ」と悲鳴を上げて、オレの肩に縋り付いた。
ちりん、と鳴る首輪に頬が緩む。
「今日は首輪だけで許してやる」
そう言って、真っ赤になった妻の頬に唇を寄せると、妻はオレの肩に顔を伏せて、「はい……」と小さく返事した。
それから2日の勤務を終え、同期らの田舎領視察も無事終わった。
同期2人は騎馬での領内巡回の時にもついて来て、あちこち珍しそうに見回していた。実際に巡回に参加してみると、人手不足も実感したようだ。
「ここまで広いとは思ってなかった」
「騎士1人当たりの責任も、随分重そうだな」
しみじみ呟くのを聞いて、オレも神妙にうなずいた。
「来るなら歓迎するぞ」
冗談半分で誘うと、「いや……」とか「それは……」と遠慮されたが、まあ予想通りなので問題ない。
妻の実家からの手配で土産物も用意して、2人には持たせてやった。
先月の帰省の時、オレの実家には乾物や香辛料、茶葉や酒なども土産にしたが、独身の騎士である2人には、あまり喜ばれないだろう。
「ご縁談がまだの方なら、こういうのもいいんじゃないかしら」
と、義母が用意してくれたのは、絹織物や細工物だ。王都でも同じものが買えるだろうが、地元だから格段に安いし、種類も多い。
「女への手土産にでもするんだな」
そう言いながら手渡すと、2人は意味深に顔を見合わせて、それから諦めたようにため息をついた。
「アルトからそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった」
「ホントだぜ、まったく」
呆れたようにぼやく2人に、「はあ?」と顔をしかめる。
「オレが何だ?」
ムッとして訊いたが、2人はそれには答えないまま、「この野郎」とか言いながらオレにヒジ打ちをかまして来た。
「この果報者!」
「余裕の顔しやがって!」
「何言ってんだ」
2人のヒジ打ちにヒジ打ちを返し、ふっと笑みを漏らす。
言ってる意味はよく分からなかったが、オレが果報者なのは事実だし、余裕があるのも事実だ。
今の生活に何の不満もない。
田舎領に来て良かったと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 37