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元々嫁にと打診されたのは黒髪の女だった。それを「女じゃない方がいい」と言って交換させたのは、単なる思い付きだったように思う。
女はウザい。それに、山賊がはびこる田舎領だ。オレの留守を預けるのに、若い女じゃ不安だった。
オレの意向を汲んだかどうかは知らないが、次に紹介されたのが、あの妻だ。最初の黒髪の女の、イトコに当たるらしい。
どうやら妻の実家、ハルバード家というのは、この田舎領の名士のようだ。
まあ、田舎の名士が王都の騎士と縁組みを結びたがるのはよく聞く話で、オレもそれを聞いて「ああ、そう」と思っただけだった。
学校教育の普及に尽力した家系のようだが、あまり興味がなかったし、よく覚えていない。
オレが通った兵学校のようなとこではなくて、読み書きや計算などを教える、普通の学校だと言ってたか。まあそれも、どうでもよかったから「ああ」と流して終わりだった。
両親も祖父母も教師だというなら、身元も確かだし教養もある。金遣いが荒かったり遊び好きだったりもしないだろう、と、思ったのはそのくらいだ。
その代わり、面白味も何もないヤツだったが、別に家庭にハラハラドキドキなど求めていない。穏やかな空気の中で、1日の疲れを癒せるならそれでよかった。
その点妻のレイは、従順だし自己主張しないし、最適だったと思う。
夜の相性も、よかった。
田舎領に配属されている騎士団員は、その領土の広さの割に人員が少ない。
少数精鋭といえば聞こえはいいが、やはり田舎だ。周辺に娯楽も少ないから希望者もそう集まらなくて、慢性的な人手不足の状態だった。
オレのように、実践で暴れたいと思う人間は、意外と少数派らしい。仕方ないから現地の若い男たちを雇い、自警団を結成させて、補助人員にあてているのが現状だ。
そうでもしないと、巡回が全くこなせない。
自警団の連中はみな、野良仕事で鍛えた屈強な体を誇っていて、そこそこ頼りになる者ばかりだ。
ただ残念ながら、オレら騎士とは戦う上での基礎が違う。そこそこ頼りにはなるが、任せっきりにはできず……つまり、どうしても防衛の穴になりがちだった。
騎士団支部での軍務会議でも、やはりそれが議題になることが多い。
「近頃、山賊が不穏な動きを見せているようだ」
田舎領での上官、騎士団支部長が会議で困ったように唸り声を上げた。
「今までバラバラだった山賊どもが、集結するんじゃないかという情報が入った」
上官の言葉に、会議室にどよめきが走る。
領土は広いし、周辺は山だらけだし、どこから襲撃されるか分からない。
少人数であちこちパラパラと襲って来るなら、こっちだってその度に迎撃するだけで良かったが、もし大勢で四方から一斉に来られると厄介だ。
統率のとれた騎士団だけなら、命令もすぐ通るし楽なんだが、ろくに訓練もできてない自警団の連中に、我々並みに動けと言ってもムリだろう。
「王都に臨時増員を頼んでみるが、当てにはならない。今いる人員で、最大限の防衛ができるよう、気合入れて努めてくれ」
上官に言われて、「はっ」とみんなで敬礼する。
「自警団にも、連携訓練を受けて貰った方がよさそうですね」
誰かの案に、上官も「そうだな」とうなずいていた。
連携訓練の案は、オレも賛成だ。今は我々の指示に従ってバラバラと動くだけだが、指示がなくてもある程度は自分で動けるようになればいい。
ただ勝手な判断で動かれれば、逆に邪魔になる恐れもあるから、やはり統率を取ることは必要か。どちらにしろ、連携訓練は不可欠だ。
問題は、誰が教官役になるかだが……人手不足の騎士団では、それに割ける余力がない。適度な人材を、どうにか探すしかないようだった。
土地の名士の孫と結婚したオレのことを、自警団をはじめ、割とここいらの領民は好意的に見てくれているようにも感じる。「ハルバードさんとこの騎士様」などと呼ばれることもあって、何だそれはと思いつつ、悪い気はしなかった。
妻の出身地だからという訳じゃないが、赴任して1年ここで暮らして、それなりに愛着もわき始めてる。
山賊などに、好き勝手はさせられない。
会議の後、夜間巡回を終えて家に帰ると、居間にはまだ明かりが灯っていた。
「まだ起きてたのか」
声を掛けながら上着を脱ぐと、白い寝巻きを着た妻がハッと顔を上げ、てててっとこっちに駆け寄って来た。
「お帰りなさいませ」
「寝てろと言っただろ」
短くたしなめると、「すみません」と顔を伏せる。別に怒った訳じゃないのだが、説明も面倒だし、そのまま流すことにした。
「ご飯は? それともお湯の用意を?」
従順な妻の質問に、「酒」と答えてどっかりとイスに腰掛ける。
テーブルの上は何かの書類がいっぱいだったが、妻はそれをバサッと片付け、すぐに酒の用意をしてくれた。
手早くありあわせのモノで、簡単なつまみを作る妻。
「お前も飲むか?」
気まぐれに誘うと、妻は従順にこくりとうなずき、差し出された盃に口をつける。
白い寝巻きのえりから白くてキレイな肌が見えていて、酒を飲むと間もなく、その肌がほんのり色付いた。
女に興味はないし、結婚相手に色気など求めていた訳じゃなかったが――妻のこの、白くてキレイな肌は嫌いじゃない。
「汗を流してくる。ベッドで待ってろ」
命じると、言いたいことを察したらしい。妻はほんのり頬を染めて、「はい」と短くうなずいた。
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