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まりあちゃん 9
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観覧車待ちの列に並んでると、
ぐいっと後ろから引っ張られた。
「えっ」
杉山くんも僕も
何が起こったかまだ頭が追いつかない。
「……みなちゃん!」
ようやく頭が追いついた杉山くんが
追いかけてくるけど
もうすでに杉山くんの姿は
小さいものだった。
「おざわくん…」
結局遊園地の出口まで引っ張られるまま
ようやく足を止めた彼を呼ぶ。
ゆっくりと振り返った彼は
少し涙を貯めていた。
小澤君が涙目なんて
僕は想像もつかなかったから
すごく驚いたけど、
すぐに
そんな顔を見られたくないというように
抱きしめられた。
「こんなの、耐えられない」
耳元でそう囁かれて
胸がきゅーっと締め付けられた。
「ほかの奴なんかと楽しそうに
しないでほしい」
肩に生暖かい雫が落ちているのが分かった。
泣くほど
僕が杉山くんと
楽しそうにしているのが嫌だったの?
僕が小澤くん以外を好きになるって
不安だったの?
そんなに僕のこと好き?
いろんなこと、
聞きたいけど、
……聞ける状況じゃないよね。
今は、
小澤くんを安心させてあげよう。
ぎゅーっと抱きしめ返すと、
小澤くんのこぼれる涙も
止まった気がした。
それから
どれくらい抱き締め合っていたか
わかんないけど
すっかり小澤くんは、
落ち着いたようだった。
「取り乱しちゃってごめん」
目元が少し赤くなった小澤くん。
そっと離れるとそんなことを言ってきた。
別に謝らなくてもいいのに。
「全然気にしてないよ」
小澤くん不安にさせたのも
付き合いたてで
自分の中で気持ちばかりが
盛り上がっていたけど、
行動にはできていなかった
僕のせいもあるだろうし。
「…帰ろうか」
そっかと微笑んで僕の手を取る。
辺りはすっかり帰りの客でいっぱいだった。
こんな人ばっかりじゃ
杉山くん達見つけられないな。
そうだねと言いながら
「杉山くん達に連絡してくるよ」
と言う。
スマホを取り出すと、
杉山くんの、
そういえば
まだ追加してなかったんだっけ。
「連絡先わかる?」
僕の様子に気がついたのか、
首を傾げて聞いてくる。
「うん、大丈夫だよ」
杉山くんの連絡先知らなくても
まりあちゃんの知ってるから
まりあちゃんに言えばいいよね。
気がつくと
僕がキーボードを打つ所を
小澤くんが見守ってくれていた。
私と小澤くん、出口まで来ちゃったから
このまま帰るねと連絡をし終える。
「帰ろうか」
杉山くんの連絡先、
もらったけど、
追加しないでおこうと
改めて思いながら
遊園地を後にしたのだった。
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