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蔵本湊 6 遠山side (修正済)
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なんだか落ち込んでいる湊に
トイレに行ってくると言って
思わず逃げてしまった。
あんなどこか残念そうな顔を向けられて
自分は嘘をついてしまったことに
罪悪感を感じた。
ずっと、信頼して俺を頼って来てくれる湊に、
俺は嘘をついてしまったんだ。
パタンっとドアを閉めて
自分のしてしまったことに恥じた。
あの変人からの頼みとはいえ、俺は……。
湊が思っていたとおり、
湊を助けたのは小澤悠斗、あの変人だった。
男どもを蹴り飛ばしていくその姿は
まさに俳優と言っていいほど、
綺麗でかっこよかった。
一緒に来いと連絡をもらい、
何事かと思えば、湊が男どもに囲まれて
助けを求めている姿があって、
小澤が蹴り飛ばし、
彼を助ける様子をただ俺はボー然と、
見ていただけ。
それなのに、アイツは――
「蔵本君を助けたのは遠山君。
俺はここにはいない。
そういうことにしてもらえる?」
俺に湊を抱かせながら
奴は綺麗な笑顔でそういった。
湊に惚れているなら、
このことは好都合なのに、
どうしてそんなことをするんだ?
俺は、わけもわからずに
目の前の変人を見つめる。
「あははっ、何その顔。
せっかくの可愛い顔が台無しだよ、遠山君」
学園で人気な男――
女子からも好かれていて
頭も運動もすべて優秀と評される小澤悠斗。
そんな男がストーカーをしていて
しかもその対象が
自分では気づいていないだろうが、
入学以来、抱きたい男一位に
君臨する蔵本湊だなんて誰が思いつくだろうか。
「やっぱりお前は……よくわからない」
頭の作りが一般人とは違うんだなと
改めて実感し、
俺は彼にそうつぶやくように言った。
「それでいいんだよ、遠山君。
さぁて、そろそろ行かないと。
店長に怒られてしまうよ」
にこっと彼は俺に笑顔を向けると、
そういって元来た道を戻っていく。
小澤悠斗。
奴の脳内がどうなっているか知りたい。
あんなに武道に長けていて頭もいい。
しかもルックスも手際もいいはずなのに
どうしてもうすぐで落とせそうな恋愛対象を
恋敵の俺に預けるのだろうか。
俺は変な恋のライバルに頭を抱えながらも、
「幼馴染にこんなに嘘をつくことが
罪悪感でいっぱいになるとは……」
はぁっと重たい何かに
ため息をつかされるなんて
思ってもみなかった。
「……燿?」
ふわっとした可愛らしい声。
驚いて後ろを見ると、幼馴染の顔がある。
「……もう少し寝てろよ。
危ない目にあったんだぞ?」
考えていたことを吹き飛ばし、
平然を装う。
「ううん、もういいよ。
だいぶすっきりしたし……、僕、帰るねっ」
ぶんぶんっと顔を振りながら
そういってにこにこと笑う。
可愛い……。
幼馴染の一つ一つのしぐさに
ときめきながらも、心配する。
さっきまで泣きじゃくっていた奴が
よく言うよと呆れ、
まだ寝ていたほうがいいと促してみるが、
一度決めたらそれを実行する彼の事なので、
だめであった。
「じゃ、ばいばいっ」
ふわふわと黒髪を風にたなびかせ
自分の家に戻っていく後ろ姿を見送る。
彼と長時間一緒にいることは心臓に悪い。
いちいち、あの鈍感は俺をときめかせるからだ。
でも、彼と過ごすのは悪くはない。
いつだって温かい気持ちになるから。
そう、俺――遠山燿は、
蔵本湊と初めて会った時から
奪われていたのである。
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