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蔵本湊 16 (修正済)
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「……うんっ!」
きっとその言葉を言われた
僕は満面の笑顔に違いない。
何かであったかくなる気持ちと
キュンっと胸が高鳴る気持ちで
いっぱいになって
僕はその瞬間、うれしいというのを感じた。
うれしいと思うことはたくさんあったけど、
これはもっと違うと思ったり。
「不意打ち……っ」
そんな僕の反応を見た
小澤君はそっぽを向いてぼそっと何かを言ったけれど、
小さすぎて僕は聞こえなかった。
それになんか小澤君、
顔が赤い気がするのは気のせいかな……?
「…ごめん、聞こえなかった。
もう一回言って?」
首をかしげながら
僕は小澤君の顔を覗き込む。
すると、小澤君は
『見ないで』と覗き込んだ僕の顔の前で
手をかざして僕を制した。
嫌な思いさせちゃったかなと
そんな行動をとられた僕はしゅんとし
ちょっと距離を置いて小澤君の隣を歩く。
共通点なんて僕らは考えてみればほとんどないため、
しばらく何も会話がないまま、ただ隣を歩く。
「……それにしても
俺を下校に誘うとしたなんて珍しいね、どうしたの?」
そんな長い沈黙を破ったのは、やはり小澤君であった。
「……えっ、えと、その……」
突然の質問にそれも答えにくい質問だったから
僕はたじろいで思わず答える内容に
ちょっと恥ずかしさを感じてうつむいてしまう。
「……その理由が俺と仲良くしたいみたいな理由だったら
なお嬉しいんだけどさ……、違うよね?」
小澤君の言葉にはっと俯いていた顔を上げて
目が合ってしまったら余計に恥ずかしく感じてしまって、
また顔を元の位置に戻す。
でも小澤君がどんな様子か気になって
また少し顔を上げてチラッと盗み見ると、
僕の様子に小澤君は気が付いたのか
口を手の甲で押さえていた。
「……もしかして……もしかして、ず、図星……?」
信じられないといった顔で僕の顔を覗き込む小澤君が、
その声がなんだかとっても恥ずかしい。
それでも質問にはちゃんと返さなきゃと思って、
俯き加減にコクッと小さく首を縦に振ると、
なぜか小澤君はちょっと嬉しそうな顔をした……気がする。
「あ、あのねっ、変な意味でのあれじゃないよっ!
ただ小澤君が僕の事つけまわす癖に
学校で仲良くしてくれないから、
気になっちゃって
だから別に変な意味ないからっ」
言い訳のように次々に出てくる自分に
嫌になった。
小澤君の次の言葉が怖かった。
本当は分かっているのに分かってないふりをして、
自分の気持ちに嘘つくので精一杯。
分かっちゃったらもうやめられなくなりそうで。
小澤君に好意を抱いてもらっているのに、
それが恋愛感情じゃなくても冷めてほしくなかった。
だから僕の気持ちに僕の事で変な目で見てほしくないし、
悪い印象を持たれたくない。
「そう、だよなっ……」
ははっと小澤君の笑った声が
少し寂しく聞こえたのは
僕の気のせいかな。
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