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一緒に帰ろう
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「で、何の用だ。」
ウエットティッシュで、えんぴつで黒くなった手を拭きながら、そう言った。
先輩は、決して表情豊かではなく、逆に無表情に近い。
俺とは真逆だなぁ…
表情がころころ変わる俺は、嘘ついてもすぐにばれてしまう。
質問に答えようと、口を開けた瞬間、チャイムがなった。
先輩はそのチャイムの音を聞くとテキパキと絵を描く道具を片付ける。
しばらくのあいだ沈黙が流れ、改めて先輩は俺にたずねてきた。
「…で、何しに来たの」
かたずける手を休めずそう言った。
「えっと…入部したいんですけど」
俺がそう言うと、先輩がかたずける手を止めた
「ああ…なるほど、えっと…山田君?」
「山野です」
「そうだったそうだった…俺は、浅野 玲二 (あさの れいじ)好きに呼んでいいよ。先生には俺が話しておくよ。」
時々見せる笑顔に、徐々に惹かれていった。
先輩…優しいな…。
じーっと先輩を見ていると、「どうした?」と頭上から低い声がする。
慌てて目をそらす。多分今俺は顔が真っ赤なんだろう。
熱い、顔が熱い…
「あの、明日から、よ、よろしくお願いします」
俺は九十度ほど頭をさげると、先輩の手が、ポンと俺の頭に乗っかった。
心臓が、止まらないんですけど…。
こんな感情を、男の人にいだく俺が、少し不思議に感じた。
次の日。
今日から、部活に通うことになった。
先輩と二人っきりで描くのは緊張したけど、描いていると、その緊張はどこかに飛んで行った。
不意に頭上から「山野」と俺を呼ぶ声がした。
パッと上を見ると先輩が俺の絵を眺めていた
「ふーん…上手いじゃないか」
「せ、浅野先輩には及びませんよ…」
「そんなことない、あ…それと」
続けて言った言葉を、俺はきっと忘れないだろう。
「一緒に、帰らないか?」
死ぬほど、嬉しかった。
まだ会って2日目なのに、先輩からの誘い。
「は、はい!喜んで!!」
喜んでって、なんだよ…
そう自分にいいきかせるけど、本当に嬉しかったんだ。
先輩は俺の返事を聞き入れると、少しだけわらって、絵をまた描き始めた。
しばらくのあいだ、心臓の音が早くなった気がした。
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