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〃 ③side真田
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監督が見合いするってハナシを聞いた次の日。
練習では、いつも通りベンチにドカッと座って
声を上げる監督の姿。
…オレさ、好きなんだよ、監督の背中。
ベンチに、ど座ってる監督の後方で汗を拭きながら
その後ろ姿を見つめる。
前を向いてる頭がクルンと回って、オレの方を見ないかな、なんて期待しながら。
オレの事、見上げる顔も好きだから。
……監督が結婚したら、奥さんの事も そういう風に見るのかな。
ソファかなんかにドカッと座って、
奥さんを見上げて「お茶」とか言ったりすんのかな。
オレの好きな あの顔で。
オレの好きな あの声で。
オレに見せない笑顔なんかも……?
まただ。胸がキュッとなる。
昨日から変だ、オレ。
顔も知らない「奥さん」に焼きもち妬いてる。
妬いたって しょうがねぇのに。
親子ほども年が違うのに。男同士、なのに……っ
こんなに近くにいるのに………触れる事くらい、
何でもない事なのに。
自分の気持ちに気づいた途端、何も出来なくなる。
人を好きになる…って、こんなに苦しい事だったか?
もっと楽しいモンじゃ、なかったか?
「おい、真田。さっきからどうした?
調子でも悪いのか?」
不意に監督が話しかけてくる。
顔はグラウンドに向けたまま。
オレを心配してくれてるのが、背中で分かる。
「いえ、別に。何でもないス…
監督、今日は張り切ってるじゃないスか。
お見合いするから気合いが入るんスかねー?」
…言いたくない事まで言ってしまう。見合いの事なんて触れたくなかった…
「あー?」
監督が振り向いてオレの顔を見る。そして すぐに前を向く。
「お前らまで知ってんのかよ…ったく、校長が廊下なんかでハナシするからよ~
デリカシーってもんに欠けるよなあ?」
「……監督にデリカシーって言葉、似合わない…スね」
「言ってくれるねぇ。こう見えてもオレだって……」
そう言いながら監督は、両肘を太股に付けて前のめりの姿勢になる。
「……色々、あんだよ…」
ポツリと呟いた後、くしゃみをする。
「悪い、真田、そこのジャンバー取ってくれ」
「あ、はい」
オレのすぐ近くに放り投げられている監督のジャンバーを手に取り、後ろから肩にかける。
監督の肩に触れたオレの両手が熱くなる。
どうしようもない衝動に駆られ、監督の背中に
自分の顔を押し付けた。
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