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ある日のお話 ~伝う熱と、嵐のような2人~03
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「入るぞー!!!」
勢いよく戸を開けながら、
元気よくカイレンが入室してきた。
リョクレンは急に戸が開け放たれ、
思わず体をビクつかせた。
相手がカイレンだと分かるとフッと胸を
なでおろし、いさめる。
「兄さん、ここは医務室です。
もうすこし、静かに入室してくれませんか」
「すまん、すまん」
まったく悪びれた様子もなく
謝罪の言葉を口にする。
「会議はいいんですか?」
カイレンはそっぽを向いて
「まずい」といった感じの顔をしたが、
すぐに話題を変える。
「トウレンが大けがをしたそうだな。
心配で来てしまった☆
それに、リョクレンにも
会いたかったしな♪」
子供のような笑顔を向けられ、
リョクレンは呆れた。
お陰で先程までの熱が冷めた。
「今、お水を飲ませるところです。
トウレンはこちらですよ」
水を汲んだコップを手にトウレンがいる
ベッドへと案内する。
リョクレンは仕切りのカーテンを開けながら
「トウレン、お水、持ってきたよ」と
優しく声をかける。
「うん、ありがと///」
トウレンが一口水を飲み下すのを
見届けると、続けて
「そして、お客さんだよ」と
呆れた声で言った。
「よ、久しぶりだな。具合はどうだ?」
リョクレンの後ろからひょこっと現れながら言う。
「――!カイ兄?!」
カイレンは大きな手でトウレンの頭を
ぐりぐりと撫でまわした。
トウレンは思わぬ来客に目を丸くした。
互いに忙しく、数か月まともに
顔を合わせたことはなかった。
「カイ兄、会議は・・・?」
トウレンの言葉にあからさまに
肩を落とすカイレン。
「また、それかよ…
皆それしか言わない…orz」
顔を上げたカイレンはわざとらしく
頬を膨らませ、
「久しぶりに会えたっていうのに!
嬉しくないのか!?」と
ぶすくれた子供のように言った。
「ごめんごめん、すげー嬉しいよ///」
満面の笑みを浮かべてなだめるように
カイレンの肩をポンポンと叩いた。
痛いはずの腕だったが、
なぜかその時はあまり痛みを感じなかった。
すっかり気をよくしたカイレンは
嬉しそうな表情を浮かべる。
「頑張ってるようだな。トウレンの頑張りは
よく耳にするぞ」
兄弟とはいえ、
総司令官の耳まで到達するのは
なかなかのものだった。
トウレンはその言葉に嬉しさを感じたが、
今回の訓練では大けがをしてしまった。
骨は折っていないものの、
全身打撲をくらってしまい、
介抱されないとまともに
生活が送れないほどだった。
「…でも、俺、すげーケガしちゃった」
トウレンはうつむいて暗い声で言った。
カイレンは再びトウレンの頭に手を乗せた。
「トウレン、ケガ程度で落ち込んでたら
キリがないぞ。ケガなんて、みんな
しょっちゅうしてる。俺だって、
よくケガしてここに運ばれたもんだ」
リョクレンがちょっといじわるな
表情をして付け加えた。
「痛いの嫌だからって、いっつも
「優しくしてくれ」って
僕にせがんできましたね」
「うっ・・・こいつ、見かけによらず、
鬼なんだ。俺にだけ厳しいんだ」
「大したケガでもないのに
ぎゃあぎゃあ騒ぐからです」
少し泣き顔になるカイレンにリョクレンは
気にせずツンと返す。
「カイ兄にも、そんなことがあったんだ」
うっすら涙を浮かべてトウレンが笑った。
「そうだ。だから、気にするな。
傷痕は漢(おとこ)の勲章だぞ」
またぐりぐりと頭を撫でまわした。
微笑ましくその様子を見ていた
リョクレンにも大きな手が差し伸べられ、
わしわしと頭を撫でられた。
「ッ!?」
カイレンはニッカと太陽みたいな
笑顔をした。
そのとき―――
バタンッ!!
医務室の扉がまたも勢いよく放たれ、
ズンズンと足音をさせて
近寄ってくる気配があった。
「ア~、ル~、ザァアアアアア!!!!」
カイレンの愛称を乱暴に発せられ、
カイレンは振り向くことなくその場で
震え上がった。
「やっぱりここにいたか!!!」
鬼の形相で仁王立ちしている小柄な
男性がいた。
「ク、クリノ、よくここがわかったね☆」
カイレンは可愛く笑ってみせたが、
逆効果だった。
「そんな笑顔でこの俺が
騙されるとでも??(怒)」
カイレンはケロッとした感じで立ち上がり、
「じゃ、またな」とリョクレンとトウレンに
向かって手を挙げた。
「帰るぞ(怒)」
「はい、はい、分かった分かった♪」
「はい、は一回!(怒)」
カイレンはぷりぷりと怒るクリノを
ひょいっとお姫様抱っこして
医務室を後にした。
「―――!!」
廊下では賑やかな声が聞こえた。
「おい、やめろ!!降ろせッ!!!」
「そんなに暴れるなよ、クリノ姫?♡♡♡」
「(怒怒怒怒怒怒怒怒)」
頭がぐしゃぐしゃになったリョクレンと
トウレンは嵐のように過ぎ去った2人の
向かった方向を茫然と眺めていた。
―――――終。
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