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ある日のお話〜敬う気持ちと、愛する気持ち〜01
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<登場人物>
カイレン(アルザ)
クリノ
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カイレンは不機嫌そうな顔でソファに座っている。
テーブルには秘書のクリノが淹れた紅茶が置いてあり、
ミルクとアッサムの芳醇な香りが鼻孔をくすぐるも、
今のカイレンを落ち着かせることはできないようだ。
会議やら書類処理、外交も務め、日々がめまぐるしく過ぎていく中で、
少しだけ時間が空くときがあるが、今日は
外に出て騎士団の訓練の様子を見に行くほどの余裕はない。
可愛い弟たちの噂はたまに耳にするが、
会いに行ける暇がなかった。それは弟たちも同じなはずだ。
カイレンにとって弟たちは可愛くて仕方のない存在で、
できることなら皆で生活を共にしたいくらいだが、
それは無情にも弟たちに拒否された。
「ぐすっ、こんなに愛しているのに、
どうしてあの子たちに会えないんだ!」
なんだか悲しくなり、ソファに備え付けてあるクッションを抱き寄せ
まるで留守番中の子供が親を恋しがるように体を丸めてクッションを抱きしめた。
「おセンチのところ悪いけど、この書類に目通しといてくれる?」
大の大人が落ち込んでいるのを呆れたような顔をしながら
やけに分厚い書類を手渡される。
「クリノ、少しは優しい言葉を掛けてくれてもいいんじゃないか?!
俺、こんなに落ち込んでんだよ?!」
「お前に落ち込んでる暇はないだろ。
やることいっぱいあるんだから、仕事に集中しろ」
「ぐすん、クリノの鬼!薄情者!小悪魔!」
「おい!最後のはなんか違うんじゃないのか?!」
「・・・だって、可愛いし」
「おい(怒)それどういう意味だ?サイズの話か?(怒)」
クリノはカイレンの秘書をやっている。
自分が小柄で童顔、しかも声が高いことがコンプレックスだった。
それを話題にされると自然と怒りが込み上げてくる。
沸点は低い。そしてカイレンに対してだけ口が悪い。
「さっさと書類に目ぇ通せよ」
「・・・読んだら、相手、してくれる?」
「はぁっ?!だっ、誰が・・・ッ!」
大きく丸い目をさらに大きく見開きながらクリノが声を上げる。
顔が熱くなるのを感じた。
カイレンは響くような低い声をしている。
近くで聞くと心臓に響きそうな声だ。
クリノはこの声が好きだった。
特に甘えるような声は体が痺れそうになる。
「ね、クリノ。」
知ってか知らずか、
更に甘えるような声で名前を呼ぶ。
「~~~~~~~~ッ!
わかったから!読んだら相手してやるから!」
「やった!じゃ、さくっと読むよ」
「しっかりがっつり読め!!」
真っ赤な顔をわざとらしく背けて、顔が熱いのを
落ち着かせるために、スケジュール帳へと目を落とした。
(俺もつくづくアルザに甘い気がする)
ちらりと横目でカイレンの様子を伺う。
そこには真剣なまなざしで書類に目を通す、キリッとした横顔があった。
(黙ってればかっこいいんだけどな・・・)
少し残念に思い、静かに溜息を吐いた。
(次の会議まで、あと30分くらいか・・・)
「読み終わったよ」
「――――!!?
はッ!?ちゃんと読んだか!?」
「読んだよ!!」
書類に目を通すのは慣れているとはいえ、
いくらなんでも速すぎる。
誇らしげな表情を浮かべながら
ニコニコと見てくるカイレイに軽くイラついた。
カイレンはクリノの気を知ってか知らずか、
構って欲しいといわんばかりに、
自分の膝をポンポン叩いている。
(膝に座れってのか?!)
クリノは少し、嫌な顔をした。
それを気にせずカイレンは
「クリノ。や、く、そ、くv」
催促され、クリノは諦めてカイレンの傍へ向かう。
カイレンは抱えてたクッションを避け、脚を軽く開き、
クリノが膝に座るのを待っている。
クリノが小さく溜息を吐いてカイレンの両膝に跨って
向い合せになるよう座った。
「クリノ、分かってる~vv」
「・・・背中向けたらまたうるさいんだろ」
前に何度か同じ体勢で座ったことがある。
初めて座ることになったときは、
向い合せが恥ずかしすぎて
カイレンに背中を向けて座ったことがある。
そのときは後ろから強く抱きしめられながら
「やだ!こっち向いて座って!!顔が見たい!!」
と駄々をこねられ、「恥ずかしいから嫌だ」と反論しても、
体を強く揺らされ一向に治まる気配がないから折れてやった。
そのときからこの座り方になった。
(この座り方するとロクなことないんだよな)
心の中で溜息を吐く。
「んで?何して欲しいんだ?」
「抱っこv」
クリノは心底面倒くさそうに、乱暴に言葉を発する。
カイレンは気にも留めず嬉々とした表情で
脇の下から腕を通し、クリノを抱き寄せる。
クリノは鍛えてはいるが筋肉がつきにくいため、
筋肉質というよりかはしなやかさのある体つきをしている。
抱き心地がいいのか、カイレンは非常に気に入っていた。
クリノもまた、しっかりと筋肉のついたカイレンの体つきには
憧れを持っており、気に入っている。
クリノは両腕をさげ、されるがままになっている。
(大きな子供ができたみたいだ)クリノは思った。
クリノの方がいくつか年上で、年下を甘やかしたりするのは、
年上がやること、と思っているが、
何せカイレンとは体格差が気になる。
膝に乗っけた子供に甘える父親、そんな構図になっていた。
しばらくクリノの抱き心地を堪能していたカイレンは
少し顔を上げ、またも甘えるような声を出す。
「ね、クリノはぎゅってしてくんないの?」
「―――――――ッ」
一気に顔が熱くなるのを感じた。
やってやらないと駄々こねてうるさいので、
目の前にある男らしくも整った顔をしたカイレンの
頭を抱きかかえてやった。
「~~~~~~ッvvv」
言葉になっていない喜びがすぐ下から感じられた。
(これが総司令官とか、笑うしかないな)と呆れた。
しかし若くして重責を負わされる位置に配属された
カイレンの息抜き相手になれていることは、
ちょっとした優越感もあったりする。
自分が相手になれるなら、とクリノは思っている。
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