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ある朝のお話~カイレン編01
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登場人物:
カイレン(アルザ)
クリノ
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「ったく、毎朝毎朝ッ
なんで休みの日までッ」
ブツブツと怒りに満ちた声で
独り言をこぼしながら、クリノは
カイレンの部屋へと向かっている。
今日の午前は珍しく時間が空き、
騎士団・・・弟たちの訓練の様子を見に行く予定だ。
なぜかクリノも付き合わされることになった。
カイレンは以前から一人で起きられない。
非常に朝に弱い。
秘書に任命された当時はそのことを知らず、
何十分待っても部屋から出てこないため、
心配になって鍵を壊してまで入室したことがある。
幾度目かでついにクリノは爆発し、
それ以来、合鍵を持ち、叩き起こすのが日課となった。
その言葉通り、「叩き起こす」。
クリノの手には衝撃を与えると
ピコピコと音が鳴る金槌の形をした
子供用のおもちゃが握られている。
ゆすってもなかなか起きないため、適度な衝撃と、
大きめの音が出る物で起こす方が効率がよいと思い、
今の形に落ち着いている。
カイレンの部屋の前に到着する。
わかっている。絶対寝てる。
しかし、わずかに希望を持っている。
もしかしたら、奇跡が起きて、
今日は起きてるんじゃないか。
そう思い、毎回、ノックする。
コンコン
・・・・・・・・・・・・・・
コンコン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
物音ひとつしない。
返ってきたのは静寂だけ。
クリノの片頬がピクピクと痙攣した。
(やっぱりな・・・)
ガチャリと合鍵で開錠し、入室する。
遮光カーテンをピッチリと締め切っており、
外は眩しい日差しが降り注いでいるというのに、
この部屋にだけ届いていなかった。
カイレンは真っ暗にしないと眠れないらしく
部屋を暗くしさらに布団に潜っている。
クリノは明かりをつけ、
こんもりと山ができている寝台に近づく。
カツッと足に何か当たった。
ベッドの横に並べているチェストに置いてあるはずの
置時計が床に転がって静かに時を刻んでいた。
「チッ」軽く舌打ちをするクリノ。
カイレンは時刻を確認する気は一切ないらしい。
毎朝見る光景。
見慣れたは見慣れたが、
だからといって許せるわけではない。
毎朝起こしに来る身にもなってほしいと
怒りしか覚えない。
怒りに任せ、ベッドの端、何もない所に向かって
腕を振り下ろす。
ピコッ
甲高い音が鳴る。
なかなかに大きい音が鳴るが、起きる様子はなく、
大きな山はピクリともしない。
ピコピコピコッ
さらに何度か打ち鳴らすも状況は変わらない。
ピコピコピコピコピコピコピコピコッッ
一切状況は変わらない。
毎回のことだが、子供用のおもちゃで
何をやっているのだろう、と虚しくなる。
クリノの怒りは頂点に達する。
「・・・ッ、アルザァアアアアアア!!!
いつまで寝てんだゴルァアアア!!!」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコッ
大きな山にポコポコと幾つものくぼみができる。
山がもぞっと動く。
「起きたか!!何時だと思ってんだ!!」
ピコピコピコピコッ
「今日はッ」 ピコピコッ
「訓練ッ」 ピコピコッ
「見に行くんだろーーッ!!!」
ピコピコピコピコピコピコピコッッ
言いながらおもちゃを打ち鳴らす。
山にはくぼみが増え、先程より小さくなった。
もぞもぞと山が動く。
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