アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
27 4days
-
なんだかんだ日が過ぎて行くうちに、周りが学祭の準備をし始めていた。
学祭はこの学校1の大イベント。男子校だけども他校の女子やらが来るから、テンションが皆上がったまま準備をしていた。
「李斗〜俺らのクラスってさ、何するの?」
「女装メイド喫茶」
「......」
女装なんて絶対したくないと思った。
李斗も嫌そうな顔をして、2人で準備をサボり窓に寄りかかっていた。
「あっ」
何かを思い出したかのように李斗は起き上がった。
「兄さん達、何してるか見に行かない?」
「え...でも、」
「...有沢先輩に会うかもしれないのが怖い?」
言葉に出すのも難しく俺は、李斗からの問いかけに頷いた。
でも、由鶴さんに会いたい...ほうが大きい。
「いや、行こう...」
俺がそう言うと李斗は少し嬉しそうに微笑んで、それにつられて少し気持ちが緩んだ。
「大丈夫?」
近づくにつれて何度も聞いてきた。心配性なのは分かるけど心配しすぎなとこが李斗の優しいとこ。
教室に着くとドアが開いていて、そこから2人で覗くと楽しく遊びながら先輩たちは準備していた。
(楽しそう...)
「あっ兄さんいた」
李斗はすぐに龍翔先輩を見つけると近くの先輩に声をかけて、呼んでもらった。
龍翔先輩はその人に声をかけられるなり嫌そうにしていたが、入り口にいた俺らを見て微笑んだ。
その龍翔先輩の表情に気づいた加屋先輩は羽山先輩に突っ込んで行った。
そして加屋先輩も入り口にいる俺らに気付き、手を振ってきた。
「楽しそうにやってるみたいだし戻ろっか?」
「だね」
由鶴さんをずっと探していたが見当たらなくて教室の後ろの方にいるかなと思い、教室の中に入りかけた時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なぁ、ここって何処にかざんの?」
「風船、と...花?」
「花の飾りなんて段ボールん中にあるわけ...あった」
「でしょ?」
少し低く落ち着く声...それを返す暖かく柔らかい声......
声だけでわかってしまった。分かった途端にそこから動けなくなった。早く戻らなきゃ、戻らなきゃいけない。
足が...重く感じて動けない......
「......李、斗」
李斗に声をかけるも声が届かない。思ったように言葉が出ない。
「助け...て......」
有沢さんが何かを探していて、どんどんこっちに近づいてくるたび胸が苦しくなった。
来ないで...
もう見たくない...会いたくない......
こっちへ来ないで...
必死になって願っていたら急に身体が動き、誰かに後ろに引っ張られた。
「朝比」
後ろに振り向くとすぐ後ろに由鶴さんがいた。落ち着いた表情で俺に微笑んだ。
「俺に会いにきてくれたの?」
今までの苦しかった思いが由鶴さんの声を聞いたことで、消えた。安心したからか急に涙が溢れ出た。
「どうした?何かあった?」
「ゆづ...る、さ......っ」
俺は態勢を整えて、由鶴さんに抱きついた。すると何も言わずに由鶴さんは抱きしめてくれて、頭を撫でてくれていた。
俺は由鶴さんが好きなのに、有沢さんと屋久土先輩を見ただけでこんなにも苦しめられなきゃならないんだろう...
苦しいよ...
「あのサキは...」
「大丈夫。俺がいるから。君は教室に戻る?それともお兄さんとこ行く?」
「いえ、戻ります。サキのことお願いします」
李斗は由鶴さんと少し話した後、教室に戻っていった。
「あーさひ」
抱きしめられたまま由鶴さんに聞かれ、顔だけあげた。目真っ赤だなーと言いながら俺の目元をワイシャツの袖口で拭いた。
「場所、変えよっか」
そう言って、俺の手を優しく握って生徒会室のある方向に歩き始めた。
いつもよりもなんとなく由鶴さんの歩くペースがゆっくりな気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
93 / 108