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無題
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俺にはずっと自殺願望があった
じゃ、どうして死ななかったのかと言われたら情けない回答しか出来ない
ただ怖かった・・・それだけ
薬を飲んで何度か死のうとした
楽に死ねたらそんなにいい事は無いしね
でも、今どきの薬じゃ死ねない
一日中眠って普通に目が覚める
よろけながら歩き転んで怪我をする程度
死ねなかった後悔とほんの少しの安堵
人間誰だって死にたくはない
毎日笑って生きて行きたいに決まってる
なんの不安もなくただ穏やかに
仕事が嫌だとか俺に言わせれば贅沢
仕事があって生きて行けるのならそれでいいじゃない
でも俺はそうじゃない
もうこの手は犯罪の色に染まっていた
一人ではどうしようもない
俺だけ警察に行ったら殺される
それは嫌だ
どうせ死ぬなら自分で死にたい
毎日が闇の中
生きているのか死んでいるのか
ただ息をしているだけの毎日
いつ捕まるかも知れないと言う底知れぬ恐怖
目を開けていても暗闇しか見えない
逃げる事も出来ない
全て俺が悪いのだから
後悔してももう遅い
毎日死に方を考える俺
飛び降りとか確実なのはわかってるけど勇気が出ない
死ぬなら同じなのにね
楽な死に方なんて無いのかもね
天国や地獄があるかどうかもわからないけど、俺の場合間違いなく地獄行きに間違いない
そんな毎日を過ごしている時、和海に出会った
最初はほんの偶然
雨の日に濡れていた俺に傘を貸してくれた人
2回目はその傘を返した時
その時はじめて俺は地面では無く和海の顔を見つめた
とても綺麗な人だった
穢れ一つないような・・・ね
俺はその時和海にお茶に誘われた
断る理由ならいくらでもあったけど俺は頷いた
その時から心のどこかで救いを求めていたのかも知れない
それと同時に苦しみが増す事も気付けなかった
その日を境に和海から連絡が来るようになった
食事の誘いであったり映画の誘いであったり
とにかく和海はいろいろな所に連れて行ってくれた
和海の事も教えてもらった
親は田舎で暮らしているらしい
東京の会社に勤め、今は大きなプロジェクトのリーダーらしい
毎日が充実している人生・・・それが今の和海だった
「雨ですね」
「うん」
「今夜も違う場所に帰るのですか?」
「そうだね」
「でしたら・・・私の家に」
「どうして?」
「理由ならあります・・・貴方が好きだから」
突然の告白だった
でも素直に嬉しかった
不安はあった
だけど俺は和海と暮らし始めた
きっとまだどこかで救いを求めていたのかも知れないね
でも不安は消えなかった
和海の笑顔を見る度に心が痛んだ
ボロボロの心は軋みすぎて歯車さえまともに動かない
もう心の中のものを全部吐き出したかった
それで楽になれるのなら・・・・・そうしたかったけど和海が離れてしまうのが怖かった
でもこの幸せは本当の幸せじゃない
偽物の幸せなんだ
だから色々考えた
自首したら間違いなく実刑だろう
何年?よくて無期懲役かもね
悪い事をやりすぎてもうわからない
「楓、ほら似合うと思って」
そう言って俺好みのピアスをくれた
「ありがとう」
「でも貴方はいつも幸せそうではありませんね・・・」
「そう?幸せだよ・・・すごく幸せ」
心とは裏腹な言葉を言いながら後悔した
俺は和海まで騙しているんだね
でも、そんな偽物の幸せは長くは続かなかった
仲間の一人が逮捕された
俺が捕まるのも時間の問題だろう
じゃ、俺は何をするべきか考えた
和海に迷惑をかけたくはない
その為にはどうすれば
「どうしました?」
「和海・・・今夜はずっと抱きしめていて」
「ええ」
一番安心出来る腕の中
俺は絶対忘れないように和海の温もりを体に刻み付けた
絶対忘れないよ・・・この温もりは忘れない
不安と幸せの狭間で俺は一つの答えを出したんだ
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