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俺は死んだ
なのに自分の死体を見つめていた
動かない自分をただ見つめていた
俺はまだそこにいた
それが不思議だった
もう一つ不思議な事に気付いた
俺の首から黒い糸が垂れていた
きっと自殺者は白ではなく死んでも黒なんだ
時間の経過とかわからないままぼんやり自分を見つめていた
そして和海が帰って来た
「ただいま、楓?」
「今夜は中華にしまし・・・・楓っ!!」
和海は俺を見つけた
俺を降ろし、泣き崩れていた
「楓っ・・・どうして・・・」
そしてテーブルの上の手紙を見つけた
和海は泣きながらその手紙を読み、冷たくなった俺を抱きしめた
「何十年でも待っていたのに・・・どうして・・・どうしてっ!」
和海・・・ごめんね
本当にごめん
悲しませてしまった事、許してね
俺は和海の隣に立ち、何度も謝った
触れたくても触れる事は出来ない体
手を差し伸べてもすり抜けてしまう
もう抱きしめる事は出来ない
死んだら楽になるなんて嘘だね
後悔しかない
悲しくて辛くて苦しくて
俺はずっとここで苦しみ続けるのだろうか?
それが俺の罰なんだろうか?
「この糸・・・どこに繋がっているんだろう」
気にはなっていたけど歩きだしたらもう和海を見る事が出来ないような気がして動けなかった
本当はこれで全て終わると思っていた
和海に迷惑をかける事はわかっていた
でもここで死にたかった
和海には幸せになって欲しかった
俺と会わなければきっと幸せになれたはずなのにね
その後、和海はどこかに電話をかけていた
話からすると親だろう
貯金の話とかとにかくお金の話をしていた
どうしてなのかはその時はわからなかった
テーブルの上に鞄を置き、財布を置いた
後、色々な書類を確かめるように置いていた
そして和海は朝まで俺を抱きしめていた
ずっと抱きしめてくれた
そして漸く和海が動いた
今度は警察へ連絡するんだろうと思っていた
でも違っていた
俺の考えていた事と全て逆の行動をとるなんて思ってもいなかった
和海?
嘘・・・・・
どうして?
やめて!
そんな事しないで!
でも俺の声は届かない
目の前で和海が俺と同じ事をしようとしているのを止める事すら出来ない
「貴方がいなければ私は無なんですよ・・・楓」
「あの世で会えれば幸せです」
嫌だ!
そんな結果を望んでたんじゃない
和海、お願い
椅子から降りて!
こんなに悲しい事は無かった
目の前で愛する人が死ぬなんて望んではいなかったのに
俺は動かなくなった和海をただ見つめる事しか出来なかった
悲しくても涙が流れない
和海を止めたくても止められなかった俺
そして俺はただ和海の死体を見つめていた
何時間、何日・・・時間なんてわからないまま俺は和海を見つめていた
悲しくて悔しくて後悔しかない
愛する人をただ見つめる事しか出来ない
死んでも会えない
俺は汚れきっているから和海には会えないんだね
死んだら全てが無になるんだ
そしてしばらくして親が来た
和海を見つけた母親は泣き崩れていた
俺は罪の無い人間まで傷付けたんだ
その後は警察が来て少しばたついたけど二人で暮らした場所には何もなくなった
何もない部屋で俺はずっと佇んでいた
一人が怖い・・・
今だって一人だ
今度は永遠に一人なんだ
しばらく空き家になっていた部屋に家族が越して来た
俺はずっと同じ場所にいた
和海と暮らしていた記憶だけはあった
それも罪なのだろうか?
苦しみ続けるという永遠の罰
そして俺は漸く歩き出した
首に繋がっているところに行く為に
そこはここより少しはいい場所ならいいのにな
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