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「社長!」
「困りました・・・私がこんな病気になってしまったので楓に会いに行けなくなってしまいました」
「今はお体の事だけを」
最後に面会に行った翌週、俺は検査を受けていた
最初は軽い胃炎だと思っていたのに
「手紙は?」
「書いているのですが返事が来ません」
「そうですか・・・怒らせてしまいましたね・・・楓に何と言って謝ればいいのでしょう・・・楓・・・」
「社長!しっかり!!」
「桜が綺麗ですね・・・楓と花見をしたかった・・・いろいろな事がしたかった」
「楓さんの事は私達が、ですからもう心配しないで休んで下さい」
「私も癌には勝てませんでした・・・楓の為に治したかった・・・それだけが悔しい」
「社長・・・」
朦朧とする意識の中、俺は見つけた
「楓・・・いつからそこへ?驚きました・・・私を迎えに来てくれたのですか?嬉しいです、楓」
光の中に楓がいた
昔のままの楓が笑っていた
「和海、行こう・・・今度こそずっと一緒だね」
「はい、行きましょう・・・もう二度と離しません・・・やはり笑顔が素敵ですね」
「ありがとう」
そして差し出された手を握りしめた
それと同時に俺の心臓は停止した
長かったのか短かったのかはわからない
でもこうしてまた楓と会えた事が嬉しい
「白い糸だね」
「ええ、とても輝いていますね」
「うん」
その糸は白く輝き、楓と繋がっていた
「そろそろ時間だね」
「ええ」
こうして俺の人生は終わった
後悔などない
楓がいたのだから
俺は部屋の中で自分を見つめていた
でも今度の俺はとても安らかな顔をしていた
ずっとそこにはいたくなかった
俺は死んだんだ
「白い糸・・・」
今度は黒では無く白い糸が小指に結ばれていた
何だろう?と俺はその糸を辿った
不思議と恐怖は無かった
そして和海を見つけた
俺の糸は和海に繋がっていたんだ
そっか
和海も病気だったんだね
そんなことまで合わせてくれなくてもよかったのに
何かを話している和海をしばらく見つめ、微笑んだ
「楓・・・いつからそこへ?」
どうやら今度は俺が見えるらしい
俺はそっと手を差し伸べた
「和海、行こう・・・」
もう苦しまなくてもいいんだよ
これ以上苦しまなくてもいいんだ
俺達はたくさん苦しんだ
和海は俺以上にね
苦しんで自ら命を絶つ事も無く命を終えたんだ
「桜が綺麗」
「ええ、空の上からの花見も綺麗ですね」
「そうだね」
二人で桜を見つめ、ゆっくりと空を目指した
今度は光に包まれていた
温かい光
ろくでもない人生だったけど和海のおかげでまともな人間になる事が出来た
辛い事もたくさんあった
悲しい事もあった
でも、和海がいたから頑張れたんだ
「もし生まれ変わったら今度はまともな俺で和海と出会いたい」
「必ず」
「いつかまた巡り合えるよね」
「はい」
光に包まれた後の事は覚えていない
でもとても幸せだった
「楓、眠いのならベッドに」
「・・・・・・・・・・・・うん」
目が覚めたのはソファーの上
俺は眠っていたらしい
「どうしました?」
「なんだかすごくリアルで長い夢を見た」
「おや」
「和海、病気とかしてない?」
「はい、いたって元気です」
「うん、よかった」
「どうしたのですか?ライブも近いですし疲れてるのですか?」
「ううん、和海・・・今夜は一緒に寝よう」
「えっ?はい喜んで」
そう
とても長い夢を見た
でもそれはとてもリアルな夢だった
でも隣には和海がいる
それは事実
俺は和海を抱きしめながらその温もりを確かめていた
夢でよかった
もしかして前世の記憶?
どちらでもいい
今こうして和海が傍に居て俺は幸せなんだから
「俺真面目になる」
「十分真面目では?」
「かな?」
「ええ」
そんな話をしながら目を閉じた
これは夢ではないよね?
目が覚めたら・・・とかやめてよね
しっかりと和海の腕を掴み微睡んだ
ー完結ー
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