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「あっ、蝶が巣に・・・」
助けてあげたい
でも窓の外には手は出せない
「翔」
「楓」
「あの蝶を助けてしまったら蜘蛛は飢え死にしてしまうね」
「えっ?」
「何日も何日もじっとあそこで待っていたんだ・・・空腹なのにじっと我慢してね」
「・・・・・・・・・・・」
確かに楓の言うとおりだ
蝶を助けられたとしても蜘蛛の空腹に手を貸すだけの事
あっという間に糸で包まれた綺麗な羽の蝶
でも、綺麗だと思うのは人間だけで蜘蛛からみれば久しぶりの餌なんだ
「あの・・・さ」
「うん」
「聞いてもいい?」
「何?」
「殺人て、誰を?」
「親」
「えっ?」
「正確には義理の父親」
「そうなんだ」
「誰でも闇は抱えているんだよ、それを表に出さないだけ・・・だから誰も気づけないし気づいてあげられない」
「・・・・・・・・・・」
「俺は自由を手に入れるためにあいつを殺した結果、もっと自由を失ったけどね」
「楓」
人間は不平等だ
どうして悪い金を貯め込む奴らは罪にならないの?
偉い政治家だってたくさんいるのに
自分の子供だから虐待していいはずない
なのに気付かれなければその子は大人になるまで虐待されるんだ
ごみを道路に捨てたぐらいでは罪にはならない
隠し撮りしたってばれなければ罪にはならない
と言うか、もうどうでもいいけどね
そしてあの時間が迫って来た
俺は初めて自分の意思で嫌だと思った
楓には見られたくないと思ったから
「翔、来いよ」
「・・・・・・・・・・・・」
布団の中でじっとしながら目を閉じた
「翔!」
その時、暖かいものが手に触れた
楓の手だ
「翔の意思だよ・・・行きたいのなら行けばいいし行きたくないのならここにいればいい」
「でも・・・」
「大丈夫、俺を信じて」
「うん」
俺は初めて人を信じた
行きたくないけど怖い
だけど楓は大丈夫だと言ってくれた
「早く来いよ!」
布団をめくられ腕を引っ張られた
やはり信じるだけ無駄
最初から素直に言っていれば殴られずに済んだかもね
「ぎゃ!」
「えっ?」
何が起こった?
目の前に流れている血は何?
「ナイフなんてね、裏ルートを使えば簡単に手に入るんだよ?今度翔に手を出したら夜中にその目をえぐるから覚えておいてね」
「ひっ!」
「それとも殺そうか?次は未遂じゃなくて殺せると思うし」
「や、やめろ・・・」
「いいね?この事を看守に話したら必ず殺すから」
「わ、わかった・・・」
嘘みたい
どうしてナイフがあるのかも不思議だけど、そのルートを知っている事にびっくりだ
「寝よう」
「う、うん」
楓は何事も無かったかのように目を閉じた
俺はさっきの楓の顔が怖くてなかなか眠れなかった
「俺が怖い?」
「さっきの楓は怖かった・・・ごめん」
「仕方ないね」
「でも、もう平気だから」
「そう」
楓は悪い人じゃない
だって約束を守ってくれたから
きっといい人に決まってる
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