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運動の時間は嫌いだ
体力がないからすごく辛いし遅れたら怒られる
薬が抜けても体がだるいし風邪気味だから頭が痛い
でもここでは薬ももらえないしただ耐えるしかないんだ
漸く運動の時間が終わり房に戻った
「翔」
「楓・・・」
「タオルで冷やして」
「ありがとう」
あいつらはあの日の一件以来大人しい
いつも楓の顔色を窺っている
人間て簡単に上下関係が入れ替わるんだと知った
「それとこれを」
「これは?」
「風邪薬」
「どうしてこんな物を?」
「内緒、早く飲んで」
「ありがとう」
薬のおかげで頭痛は収まった
おかげで夕食も食べる事が出来た
この夕食にも慣れて来た
最初はまずくて食べたくなかったけど人間はお腹が空けば何でも食べられるんだ
自由時間はいつも楓と一緒にいた
特に話すわけでも無くただ傍にいたかった
それは自分を護りたいと言う気持ちも多少はあったかも知れないけど、きっと楓は俺の気持ちに気付かれていると思った
「翔はここを出たらどうするの?」
「わからない・・・親もいないしどうしようかな」
「こんな所にはもう来たくないでしょ?」
「もちろん、でも・・・自信が無い」
「確かに一人で生きて行くには大変だからね」
「仕事も見つからないだろうし、住む所も無いから」
「そう」
「まだまだ先の話だけどね」
「うん」
ここを出たらどうしようとか考えていなかった
待っていてくれる人もいない
でも生活はしなければいけない
考えるだけで気が重い
もしかしてここの方が外の世界よりいいんじゃないのだろうかと考えてしまう
「今はそんなに考え込まなくてもいい」
「うん・・・でも楓は?楓はどうするの?」
「どうしようかな」
「でも・・・刑期は俺より長いんだよね・・・ここを出たらもう会えないのかな」
「翔は会いたい?」
「会いたいよ・・・唯一信じられる人だから」
「ありがとう」
「真面目に生きていればどこかで会えるかな?」
「会えるよ、きっと」
「うん」
そっと握りしめてくれた手はとても温かかった
それだけで安心する
こんな場所で初めて安心するなんてね
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