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その日もいつもと同じように静かに過ごしていた
本を読んだり勉強したり・・・いつものように楓の傍で笑っていた
「翔、出なさい」
「えっ?」
「早く」
意味が分からなかった
もしかして楓との事がばれて離されてしまうの?
そんなの嫌だ
でも全然違っていた
身元引受人が現れたので仮釈放されると言われた
もしかして母親?
だけど違っていた・・・俺は体中が震えた
俺の客だった奴が身元引受人になって俺は仮釈放される事になったと聞いた
絶対嫌だ
そんなの前の生活と全然変わらない
だから拒否した
でも無駄だった
房を移されて俺の仮釈放の日が近付いて来た
もうどうしようもない
地獄に堕ちてもいいから死んでしまおうか?
楓を裏切る事なんて出来ないししたくない
一体どうすればいいの?
そう考えると、地獄だと思っていたここが天国に思えた
そして夜が明けてしまった
俺は房から出され、塀の外に出る事になった
あんなに待ち望んでいたはずなのに楓と知り合ってから出たくないとさえ思っていた
「翔、今夜から毎晩可愛がってやるからな」
「・・・・・・・・・・・・」
黒い車に乗せられ、楓にサヨナラも言えないまま涙を堪えた
俺は外に出てももう自由は無いんだ
同じように暗闇に閉じ込められて生きて行くしかないんだ
膝の上に乗せられた手が気持ち悪い
でもこれが現実
俺は幸せを求めてはいけないんだ
その時突然急ブレーキがかかって驚いた
「何だ?どうしたんだ!」
「はい、突然横から出て来た車が目の前で停車して」
「早く退かせろ!」
「はい・・・あの」
目の前には白い車が止まっていた
綺麗な白い車から降りて来たのはとても綺麗な人だった
「何だ貴様!」
「私の顔をご存じないとは・・・」
「えっ?・・・まさか!」
何が起こっているの?
全く分からない
「楓、彼で間違いないですね?」
楓?
だって楓はまだ・・・
そして白い車から出て来たのは
「正解」
「よかったです」
「翔、行こう」
「えっ?でも・・・」
「また同じ人生を繰り返すの?」
「嫌だっ!でも俺は」
「翔の身元引受人はこの和海になったんだ、だから安心して」
「えっ?」
「さぁ、車へ」
あいつは何も言えないまま愛想笑いをしていた
俺は車から降りて楓の手を掴んだ
「楓、でもどうして?」
「それは車の中で」
「うん」
車に乗り、最初に綺麗な人を紹介してくれた
「彼は和海、俺の親友」
「よろしくお願いしますね」
「よろしく」
「じゃ、疑問に答えるね」
「うん」
「俺があそこへ行ったのは捜査の為」
「えっ?」
「殺人犯じゃない」
「・・・・・・・・・・」
「和海のお兄さんがあそこの所長をしていてね、俺が看守や刑務官をはっていた」
「看守や刑務官・・・」
「俺が蜘蛛の巣を張ってやつらがかかるのを待っていた」
「ごめん、よくわからない」
「暴力があった事は耳には入っていたらしいけど証言する奴がいなかったから困っていると聞いてね」
「それで楓がわざと?」
「そう言う事」
「実際何もしなくても暴力はあったし理不尽な事もたくさんあったかな」
「もしかしてだから薬も?」
「だね」
「そっか」
「俺は体で証明して所長に報告してあいつらはすぐに別の部署に異動になった」
「だから静かだったんだ」
「そうだね・・・報告が終わっても俺は翔といたかったからあそこにいたんだ・・・でも翔が突然釈放されると聞いて焦ったのは事実」
「俺・・・すごく嫌だった・・・でも無理矢理」
「嫌な予感がして所長に尋ねたら和海の子会社の社長だとわかってこうして待っていたんだ」
「夢じゃないよね・・・俺」
「夢じゃない、所長もこの事は知っているからもうこいつと行く必要はないんだよ」
「嬉しい・・・」
「これからは俺と生きて行こう」
「うんっ!ありがとう・・・すごく嬉しい」
「楓は捜査で入ったはずなのですが、翔に出会ってしまったのは誤算でしたか?」
「まさか、その反対だよ」
「そうですか、確かに楓の笑顔を初めて見ましたし」
「うるさいよ?」
「すみません」
「翔、これから俺達の家に向かおう」
「家?」
「離れたくないから」
「俺も」
嬉しい
ずっと楓といられるんだ
しかも明るい世界で
「初めて楓にお願いをされた時は耳を疑いました」
「それは言わない約束」
「そうでしたね・・・確かに彼に惹かれない人はいないでしょう」
何だかすべてが夢のようで勝手に涙があふれて来た
「和海が泣かした!」
「えっ?」
「違うよ・・・幸せすぎて」
「翔はもっと幸せにならないとね」
「うん・・・うんっ」
「それと仕事だけど和海が書店を作ってくれるって」
「えっ?」
「あんなに本を読んだんだし頑張れるよね?」
「うん、頑張るよ」
作るって・・・でも深い事は聞かない方がよさそうだ
「ところで楓の仕事って刑事?」
「俺?」
「うん」
「ギタリスト」
「へっ?」
「ご存じありませんでしたか?」
「全く・・・音楽とか聴かないし」
「有名なバンドですよ」
「バンド?」
「はい、すぐにわかります」
・・・・・・・・確かにすぐにわかった
だって広告塔には楓の顔があったから
「どうして捜査を?」
「和海が困っていたからね、それに半年はオフだったしその間に証拠をつかもうと思った・・・興味もあったからかな」
「そうなんだ」
「翔の刑期も知っていたけど真面目になって勉強もしていたから早く出られる事になったと聞いた時が一番焦ったかな」
「俺は凄く悲しくて出たくなかった」
「ごめんね、何も教えられなくて」
「ううん、今こうして一緒にいるだけでいい」
「後、嘘をついた事も」
「そんなのいいんだ」
こうして俺は今度こそ真面目に生きると誓った
もう一人じゃない
俺の隣には愛する人が居る
人生に絶望していた俺を救い上げてくれた人は楓
きっと俺は楓の垂らしてくれた糸を知らない間に掴んでいたのかも知れないね
ー完結ー
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