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③
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空には青空が広がり、七色の鮮やかな大きな虹がかかっている。
しばしの間、空にかかった虹を眺めていると尚哉の躯が、すっと離れた。
今まであった温もりが遠ざかる。
心までが冷えていく感覚。
「今日は帰りが遅くなる。出迎えはいいから、先に寝ていろ」
そう言い置いて、尚哉は慌ただしく部屋を出て行ってしまった。
(さっきの兄さん………昔のように優しかった……どうして……?)
今まで散々僕を無理やりに犯していたと言うのに……。
何故?
凌辱し尊厳を傷つけ、恐怖を植えつけておいて、気紛れな優しさなら優しくしないでほしい。
どっちが本当の兄さん………?
複雑な思いで由貴が小さく息を吐いたとき、ベランダの方から男の声が聞こえてきた。
「げっ、雨で洗濯物がビショビショ……あっ!俺の五百円っ!」
チャリンとお金が落ちる音が聞こえ、両隣を隔てる壁の隙間から、五百円硬貨が転がってきたのが見えた。
ベットから降り立ち、ベランダへと出ると五百円硬貨を拾い上げる。
そして、両隣を隔てる壁から顔を覗かせ、這いつくばって壁の隙間から手を伸ばしている男に声をかけた。
『あ、あの………』
「えっ!あ、これは……」
由貴の声に男は、はっとし、顔をあげると慌てて立ち上がり
気まずそうな表情を見せる。
由貴は思わず、その男の端正な顔に見惚れてしまった。
(うわぁ、かっこいい……)
キャラメル色に染めたサラサラな髪に、通った鼻、意志の強そうな切れ長の漆黒の目、180近い長身でその上もの凄いイケメン。まるでモデルのようだ。
「あ、オレ、決して怪しい者じゃ。ただ洗濯物を取り込もうとしたから、ポケットから五百円が落ちて隣のベランダへ転がってしまって、それを取ろうとしていただけで……」
『五百円って、これのことですか?』
「そうそう。サンキュー、助かったよ」
五百円硬貨を手渡して、それを受け取った男がじっと、由貴の顔を見つめてきた。
何かもの言いたげな瞳が、まっすぐ由貴を捉える。
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