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第一章 出会い(1)
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明頌学園の春は、寮生たちの大移動の季節だ。
中等部に併設された二つの寮、東寮と西寮から、卒業式を終えたばかりの高等部新1年生が、自分たちの荷物を抱えて、新たに高等部の二つの寮、第一ドミトリーと第二ドミトリーへ引越しを行う。
進級にともなって、引越しが必要なことは皆承知していたので、なるべく余計なものが増えないように生活していたし、机、椅子、ベッドなどの基本的な生活家具は寮の各部屋に据えつけてあるので、荷物はそれほど多くない。
それでも、衣類や書籍、趣味の雑貨などを用途別に段ボールに荷造りし、その荷物を抱えて、寮と寮の間の数百メートルの距離を何度も往復するのは、それなりに骨の折れる仕事だ。
俺も荷造りや荷運びに数日はかかるかと覚悟していたが、実際始めてみると、中等部時代に所属していた硬式テニス部や東寮の後輩たちが集まってきて、どんどん荷造りを手伝ってくれたので、その作業は半日で終わり、あとは荷物をまとめて運びこむだけになった。
俺のいた東寮の新寮長になった川口が、どこからか台車を3台調達してきてくれたので、テニス部の後輩で寮も同じだった栗山、俺とで、その台車を使って一気に荷物を運ぶことにした。
「嶋田さん、この本、全部読んでるんですか?」
紐で束ねた本が山と積み上がった台車を押しながらそんな不可解なことを尋ねてくる川口に、俺が、
「読まずに持つだけ持っててどうするんだよ」
と答えると、
「まじで!さすがだな~」
「勉強して、部活やって、寮長の仕事して、いつこれだけ読む時間あったの?」
などと栗山と川口は口々に言う。
でも、逆に、そんなに時間ないものなのかな、と心の中で俺は思った。
実際は、図書館で借りたり、読んだあと処分したものが大半で、手元に置いているこれらは、今後も確実に読み返す予定のあるものだけだったので、そんなふうに言われることが不思議だった。しかし、そこで、全てが既読の気に入ったものばかりでなかったことを思い出して、
「あー、そういえば、お前らにこないだもらった雑誌は読んでない」
と付け加えると、栗山が不機嫌そうに眉を顰めて、
「ほら、見ろ。俺、絶対あんなのいらないって言ったのに」
と、川口に文句を言った。が、お調子者の川口は
「またあ。いいじゃないですか、素直になれば。人の趣味はそれぞれですから、恥ずかしいことじゃないですよ」
とおどける。俺は
「いや、ほんとに熟女とか別に興味ないから」
と苦笑いした。
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