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第一章 出会い(9)
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俺が断ると、
「どうして?」
と、桐谷さんは、俺を見つめたまま静かに訊いた。俺は、
「ルームメイトは、他の人の手で最初に割り当てられて決められただけだから、通常は、寮で一番気が合う相手でも、何でもわかりあう相手でも、親友でもないです。
だからこそ、信頼関係が大事だと思うんです。
何かの拍子に、人に知られたくない相手の秘密や悩みを知ってしまっても、自分は知らないふりして口外しないし、相手もそうしてくれるだろうと思える、そういう信頼関係が。
一方が、もう一方を監視して、誰か他の人間にその行動を報告したりしたら、ふたりの信頼関係はめちゃくちゃになります。
一番心が安らげるはずの自分の部屋に、居心地が悪くて、とてもいられなくなるんです。
そんなのはいやです。
だから、できません」
と自分の思うところを語った。気を悪くするかと思ったが、俺の言葉をじっと訊いていた桐谷さんは、
「なるほど」
と頷き、なんだか面白そうだった。
「じゃあ、西野がまた何か問題を起こしたらどうする?嶋田の部屋に、誰かを連れ込んだり」
それまで自分とは関係なさそうにしていた橘さんが、初めてまともに話に入ってきた。こちらも気を悪くしたふうではなく、むしろそれまでより穏やかな口調だった。
俺は橘さんの方に向き直って、
「そういうのは困ると、率直に話します。お互いに心地よく暮らせるように、西野と話し合います。これまでのルームメイトともそうしてきました。できると思います」
「そうか」
橘さんはひとつ頷いて、桐谷さんと目を見交わして、また頷いた。
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