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第一章 出会い(15)
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しばらくして栗山たちが引き上げ、西野とふたりになると、部屋は急に静かになった。
西野が言った。
「栗山、嶋田が帰ってくる前も泣いてたよ」
「え!?あれ?そういえば・・・・・・なんか笑いすぎて泣いてたんじゃないの?」
俺が驚いてそう言うと、西野はかぶりを振って、
「最初は雑談してたの。俺も一緒に。あの、雑誌、」
と言って、西野は例の雑誌を指さして、
「川口が段ボールから出してきて、嶋田さん、こういうの好きな人で、とか茶化してたら、栗山が怒り出して。なんか、送別のプレゼントだったんでしょ。後輩のみんなからの。なのに、こんなくだらないもの買ってって。俺は、せっかくあげるのに、もっとちゃんとしたもの買いたかったのに、って」
「そっか。栗山、結構きまじめなところあるからな」
栗山がそんなふうに気にしてくれていたことは嬉しかった。そんな俺の心の動きを察したように、西野は
「でも、川口もウケ狙いしか考えてなかったわけじゃないみたいだよ。もうこれで会えなくなるわけじゃないのに、あんまり特別に、お別れっぽいものは嫌だって思ったって反論してた」
その言い分も川口らしいな、と俺は思う。
「うん、それも、わかるよ」
「慕われてるんだね」
西野が微笑んでそんなふうに言うので、俺は普段の後輩たちの様子を思い返して、
「うーん、そうなのかな。なんかいつもあいつらタメ口だし、先輩を先輩とも思わずにイジってきたりだから、あんまりそういうふうに思ったことなかったけど。でも、あいつらの気持ちは嬉しいよ」
「東寮って、西寮とは雰囲気全然違うんだなーって思った。嶋田、寮長だったんでしょ。俺、西寮で寮長やってた海音寺と同室だったけど、後輩が海音寺にタメ口とか、考えられない」
「西寮は、上下関係が厳しい?」
「普通はそんなこともないけど。海音寺は、特別だったよ。本人がそういうふうに威圧するわけじゃないけど、なんか、後輩が気軽に話しかけたり、馴れ馴れしくはできない雰囲気あったかも」
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