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第二章 秘密(18)
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西野は膝の猫に落としていた視線を、ぱっと俺の方に向けた。
「ほんとに!?やっぱりそうなの?よそでももらってるんじゃないかって、今までも思ったことあったんだけど。なんか一日何も食べてないにしては、あんまりほしがらないときが結構あって」
「東寮にネコ部ってあるの知らなかった?猫好きの有志で、この猫の世話してるんだ」
「そうなの!?全然知らなかった」
「去年の夏くらいだったかな、寮則で禁止されてるのに、一部の生徒が猫にえさやりしてるって問題になって。それで、問題視してるグループとえさやってるグループとで話し合いさせて、その結論に基づいて、寮則も改正したんだ。
世話するのは認めるけど、寮の中には入れないとか、えさやりは決められた場所のみとか、雌には避妊手術も受けさせるとか。
去年の秋に、寮祭の収益の一部で、避妊手術したから、しばらくお腹の毛がなかったでしょ。気が付かなかった?」
「あ。そんなことあった!1匹だけ、しばらく見なくて、帰って来たと思ったら、お腹の毛が薄くなってるし、大きな傷があるしで、俺、どこかで怪我しちゃったんだと思って、すごい心配したんだ。あれ、手術の跡だったんだ」
「ネコ部、人気あるよ。今年も新入生、15人くらい入ったって聞いたし、これからも廃部になる心配なさそうだから、だから、こんな夜中に西野がわざわざえさやりに来なくても大丈夫だから、安心していいよ」
俺がそう告げると、西野はしばらく黙っていうつむいていたが、突然、両手で自分の顔を覆って、頬を拭い始めた。
西野は、泣いていた。
「よかった。
俺、俺が高校、卒業したら、この子達、どうなるのかって、ずっと心配してて」
俺は隣に座っている西野との距離を詰め、横から彼の背中に自分の手を添えて、西野が泣き止むのを待った。
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