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第三章 帰郷(4)
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聞き出せたのは、西野が幼いころ、母親の浮気が原因で両親が離婚し、自分は父親に引き取られたこと。
しかし、西野が小学生のころ、一緒に暮らしていた父が事故で亡くなり、かつての浮気相手と再婚していた母親のもとに引き取られたこと。
新しい家族とはうまくいかず、親の勧めと自分自身の希望が一致し、全寮制の明頌を受験し、ここに来ることになったこと。
それは、西野が長期休暇中でも実家に帰りたくない理由として、俺が漠然と想像していた範囲の話ではあったが、それだけのつらい経験を西野が重ねてきたことを、実際に、具体的に西野本人の口から聞くと、俺は、もっとも身近な友人として、たまらない気持ちになった。
数日間、しばらくひとりでそのことについて考えたあと、俺は、自分が帰省するとき、実家に一緒に来ないかと西野を誘った。
もちろん西野は当初、とんでもない、そんな図々しいことはできない、遠慮する、と言った。
でも、俺は、もう母に話してしまった、母が俺の学校の友達に会うのは初めてで、とても楽しみにしている、父ももう新幹線のチケットをふたり分手配して俺に送って寄こしている、今更キャンセルするにも、JR西日本の窓口で買っているので、送り返して親に払い戻すよう頼まないといけない、父はそういう面倒を一番嫌がる、と畳みかけた。
西野は黙って考えたあと、猫を置いていけない、とぽつりと言ったが、そう言うだろうと読み切っていた俺は、俺の帰省期間中、ネコ部の部員が何人も残っていることは確認している、大丈夫だと、強く請け負った。
西野は抗弁の材料をなくし、困ったような顔をしていたが、俺が、一緒に行こう、ともう一度力強く繰り返すと、ようやく微笑んで頷いた。
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