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第三章 帰郷(34)
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俺は思わず、
「昨日、なんか聞こえた?」
と尋ねてしまい、篤哉は、は?と眉間にしわを寄せたが、すぐに、あー、と声をあげて
「何も聞こえてねえから、安心してよ。なんだよ、俺、夜中まで、こんな慣れねえ勉強なんかしてんのに、兄貴は」
などとからかうように言うので、西野は真っ赤になってしまった。
俺は、なぜわかるのか、無自覚のうちにそんなに態度や雰囲気に出ているのだろうか、とやや不安になったが、篤哉は俺たちの関係をさして気にしたふうもなく、西野を無遠慮に見ながら、
「でも、なんか意外。俺、兄貴は絶対すげーブスとつき合うと思ってた」
などと失礼なのかそうでないのかよくわからないことを言った。
「別に、容姿は関係ない」
と俺が、関係自体は認めた前提で開き直って話すと、
「や、兄貴はそうなんだろうけど、普通、こんな綺麗すぎると、どうしても気後れして引くじゃん。って、そういう感覚ないからつき合えるのか」
と篤哉はなんだかわからない理屈を言って、ひとりで勝手に納得した。
俺は、こんな話題で、いたたまれない思いでいるだろう西野を気遣って、
「お前、意外と、ちゃんと勉強してんだな」
と話を変えた。篤哉は、テーブルの上に置いた参考書をつまらなさそうにペラペラめくりながら、
「しかたないじゃん。親父の会社継ぐんなら、大学くらい出ないと」
などと言う。俺が、
「お前、継ぐつもりなの?」
と驚いて尋ねると、篤哉は挑発的に笑って、
「だって、兄貴、パチ屋なんか継ぐ気ないだろ。だったら、俺しかいないじゃん」
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