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第五章 新学期(1)
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寮長室の前、俺は少し緊張していた。
ここに来るのは、この第一ドミトリーに入寮した日以来だ。あのときは、まだ嶋田のことも知らずにいた。そう考えると、まるで前世のことみたいに感じる。たった半年前のことなのに。
嶋田に取り付けてもらった面接時間は、日曜、午前11時。時計の針が11時ちょうどを指すのを確認し、ノックする。
笑顔、笑顔、と心の中で繰り返す。そうしてないと、声も表情も固くなってしまいそうだ。
俺は、桐谷さんが嫌いだった。
がちゃっとドアが開いて、中から桐谷さんが顔を出した。
「どうぞ」
と笑顔で中に招き入れられる。
俺は、会釈して部屋に入りながら、あらためて近くで見ると、やっぱり綺麗な人だなと思う。そして、背筋がぴんと伸びて、身のこなしが優美だ。
単純な容姿の美醜にはあまり関心のなさそうな嶋田も、きっとそんなところには惹きつけられたことがあるに違いない。そんな考えなくていいことを考えて、俺は内心、また勝手に不機嫌になりそうになる。
俺たちは、部屋の中心にあるソファに、向かい合って座った。
「寮長、立候補なんて初めて聞いたよ。指名受けて、受任っていうのが当たり前だったから」
「すみません」
「いや、いいんじゃない?やる気がある人がやる方が。西野なら、みんな喜んで言うこと聞くと思うし。嶋田なんかより適任だったかも」
嶋田のことを『なんか』呼ばわりされると、内心むっとするが、顔には出さない。これから仕事の引継ぎ等で、つき合いが増える。なんとかつつがなくやり過ごしたい。
「ご期待に沿えるように、頑張ります」
と俺は笑顔で答える。すると、桐谷さんも笑顔になり、
「引継ぎはおいおいやっていくとして、隣の部屋、見てみる?興味あるでしょ」
と寝室のドアを指さした。
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