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第八章 祭りの後(10)
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寮祭が終わると、しばらく寮同士のつき合いは途切れる。
海音寺とは、寮祭の日以降、寮長としての仕事を通じて特別に会う機会も必要もなく、俺はそのことに少しほっとしていた。桐谷さんに言われたように、揺れてなど断じていないはずだったが、ただ、あの日、キスを交わしてしまったことはなんとなく気持ちに尾を引いていた。
学校の廊下や階段などで、何度かすれ違ったことはある。
そんなときも、海音寺が特に挨拶して来たり、俺から何か軽く声をかけたりすることはなかった。知り合いでも何でもないように、互いに全く気づかぬふりで、すれ違う。
『また、ともだちに』と、俺から言ったわりには、それは冷たい態度だろうか。かえって、意識しすぎているようだろうか。
でも、だからといって、今より距離を縮めようとするのも、相手の誤解を招く気がして、結局、そのままになった。
海音寺の存在は、またつき合いが必要な時期が来るまで、忘れて過ごすことにした。
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