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第十一章 三学期(5)
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中等部時代のある日、海音寺と俺は、珍しく、数人の友人たちの雑談の輪に混じったことがあった。
そうして、何かの流れで、自分の取柄は何か、というような話題が持ち上がったのだが、海音寺は少し思案したあと、「自信持って言えるのは、セックス上手いことくらいかな」と発言して、並み居る童貞たちを絶句させた。
しかし、俺はそのとき、正直、こいつ、誰もわからないと思って、よく言うよ、と内心で思っていた。
俺たちは、すでにその頃、抜いたり抜かれたり、といった関係を始めていて、もちろん、それは自分でするよりはかなりマシではあったが、上手いと感心するほど自分が気持ちいいと俺は思ったことがなかった。
実際、海音寺も、俺に触れているとき、お前不感症?などと首をひねることがあり、今一つ手ごたえを感じられないようだった。
以前はそんなふうだったので、俺は、あらためて、海音寺と真面目な交際関係になっても、正直、身体の相性はあまりよくないのではないか、感じないのにしないといけないなら、演技するしかないのだろうか、などと考え、それ以上関係を深めることを、少し憂鬱にさえ感じていたのだ。
だから、自分が今、海音寺に触れられて、こんなに感じていることは、全く予想外の反応だった。
触れられれば、きっと嶋田を思い出してしまうと思ったのに、全くそんなことにならないくらい、嶋田と海音寺の抱き方は、まるで違った。
嶋田は全く経験がなくて、俺も海音寺と少し戯れたことがある程度だったので、俺と嶋田のセックスは、いつも試行錯誤、手探り、といったかんじだった。そうして、少しずつお互いの好みや新しいやり方を覚えていくのは新鮮で楽しかったし、何より、互いへの愛情を確認し合うのが自分たちのセックスの主な目的だったので、愛の言葉を交わし合ったり、永遠に続くかと思うほどただ互いを見つめ合ったり、直接的な行為以外のところで満足感を得ていた面も多分にあったと思う。
一方で、海音寺とのセックスは、俺には、まるでその授業かなにかのように思える。海音寺と俺では、その経験値が違い過ぎて、大人と幼い子ども、先生と生徒みたいだった。
海音寺は、え、そんなところ、と俺が思うような、俺が初めて人から触れられる場所、耳の中や手の指の股、わきの下や脚のつけ根までを指で撫でたり、舌で舐めたりして、丁寧に刺激し、俺の快感を巧みに引き出した。
俺はそんな思ってもいないところで気持ちよくなることが恥ずかしく、何度も「だめ、だめ」と否定する言葉を口にしたが、「気持ちいいなら、だめ、じゃなくて、恥ずかしがらずに、いいって言ったらいいんだよ」と繰り返し、優しく諭されて、そのうち、俺はその言葉通りに素直に従うようになった。
そうして、優しく丁寧な前戯で俺の身体をとろとろに溶かしてから、海音寺は、俺の中に入ってきた。そして、俺を翻弄し、いかすたびに、自在に体位を入れ替えて、また、俺をいかせ、もう声が枯れるほど喘がされ、何度いったかわからないくらいいかされたあと、やっと最後に、海音寺は一回だけ、俺の中に自分を放った。
そして事後には、もう指一本持ち上がらないくらい疲弊した俺に、海音寺は腕枕して、何度もこめかみや額に触れるだけのキスを繰り返しながら、
「まどか、すごく可愛かったよ」
などと囁いて、ずっと余裕のある、大人の男のように振舞った。
最初に涙など見せたためか、今日の海音寺は徹頭徹尾、俺に何もさせないままだったので、さすがに
「つまらなくなかった?」
と尋ねたのだが、海音寺は面白そうに笑って、
「そんなわけないだろ。反応が前と全然違って、びっくりした。まどかの身体、こんなにした嶋田には、さすがに妬けるな」
と言った。言うか迷ったが、
「嶋田とも、こんなふうになったことはないんだ」
と俺が正直に告げると、
「うれしいよ」
と海音寺はその言葉通りに、嬉しそうに目尻を下げた。
そうして、俺が眠りにつくまで、海音寺は、事後の倦怠に満ちた俺の身体を優しく撫で続けてくれた。嶋田と朝まで過ごせるときは、大体いつもそうだったのとは逆に、俺は相手より先に、深い眠りに落ちた。
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