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四
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オヤジは何を思って俺をひっぱりこんだのかいまだに理解できていない。
明らかにむいていないし、腕っぷしもない。喧嘩なんかできるはずもないし、刃物や銃だって触るのも嫌だ。じゃあ頭を使って金をつくれ、そう言われても商才も持ち合わせていなかった。
見限ってもらえたら放り出されると考え、金を使うことを楽しんだ。仕事は必要最低限しかしなかったし(本当のところはできなかったが正しい)大部分を桜沢に押し付けた。
あがりで女と遊び、たまに男とも遊び、夜の街で飲み歩く。それにもじきに飽きてしまい結局は「庭」に戻ることになった。
朝起きて水をやり、草をむしり、花を植え手入れをする。
嬉々として土いじりをする俺をみて、組の人間は何を思っただろうか。組の将来を憂いただろうか。
俺には関係なかった。オヤジはピンピンしているし、桜沢がバリバリ働いているのだから。
そのうちに桜沢ではなく小菅という男が俺につくようになった。
まさに腰巾着といった男で、褒めるところのない俺におべんちゃらを浴びせ居心地の悪い思いばかりさせる。
俺がどこにいこうが小言を言うこともしない。オール「YES」で向かってこられると反抗する気も起きないから、ますます俺は木偶の坊と化していく。
それなのに桜沢は何かあると迎えにくる。「若、今日は会合があります。」そんなことを言って、行徳を従えて俺に頭を下げるのだ。毎回この茶番を繰り返しているわけだが、小菅といるよりずっと楽しいと思っている自分に気が付いてしまった。
なんだかんだいって、俺は桜沢が好きなのだろう。
年下の癖に小言は言うし、俺の嫌がる仕事をさせようとする。でもなんとなく思うのだ、困った奴だと思っているだろうがバカにされてはいないと。
それはきっと俺がオヤジの息子だからだ。
自分の父親以上に父と認め、ひたすら忠義を尽くしている相手の息子。それを蔑ろにするような男ではない。
桜沢はそういう男だ。
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