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十二
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「何度聞いてもいい返事はできませんよ。そんなに熱心になるくらいいい話なら、オヤジに直接言えばいい。」
龍成会の若頭である菱沼は小菅と一緒になって、俺にクスリによるアガリのでかさを説いてくる。
そうはいっても、別にそんなヤバイものに手をだす必要がない。桜沢が確実に稼いでいるし、中にとりこんだ客にはメリットになるお偉いさんも多く存在しているようだ。
なにもそのパイプが不愉快に思うようなシノギに手をだすことに意味を見いだせない。
それくらいは俺にだってわかる。
「こう言っちゃなんだが、そちらさんの正当な後継者は貴方じゃないですか。桜沢みたいのにデカイ顔されてばかりじゃ格好もつきませんよ。」
またそれか・・・。
俺にとって権田は「間違った場所」だから、そこを継承する意味がない。それに俺を頭にすげるほど、オヤジは親馬鹿じゃない。
「まあ、そちらの話しはわかったよ。帰って桜沢と相談すればいいんだろ?」
「いや、それをしてしまったら、チャンスを失うことになりますよ?」
「そうですよ、若。桜沢は絶対オヤジさんに言います。そうなったらこの話はチャラになってしまう。」
いつからそんなに仲良しになったんだろうな、お前らは。
小菅の顔を見ると、頬を上気させて俺を引き留める気マンマンだ。
「いずれにしても、ここでハイそうですか、わかりましたと言える話じゃない。考える必要もあるし、今日の所は帰らせてもらう。」
立ち上がった俺をさすがに止めたりはしなかった。小菅はしぶしぶと言った顔をして同じように立ち上がる。
とりあえず今日のところは帰って、そうだな・・・3日くらいして「やっぱりどう考えても無理ですよ。」と言えばすむだろう。
小菅はすっかり龍成会にやられてしまったらしい。
また何か言って来るか、もしくはコソコソするようならオヤジに言いつけるしかないだろう。
面倒くさい・・・が。
人払いをしたクラブのボックスから店内に出る。
綺麗に飾り立てた女達と疑似恋愛を楽しむ男達が今晩の勝利を収めるために酒を飲む。金をもっていることを見せつけ、女の気を引き得られるのはSEX。
そんなにしたいのか?最近、俺は飽きたよ、SEXってやつが。30代半ばでこの有様は枯れ過ぎだろう。いっそうのこと植物園に就職して草木を愛でて一生を終えるか?その方が性にあっていそうだ。
ビルの外にずらっと並ぶタクシー。小菅はそれを止めてドアに手を掛けた。
「自分はまだ少し話すことがあります。先にお戻りください。」
やれやれ、若頭をタクシーに突っ込んで帰すとはな。
菱沼との話があるってことだ。俺を丸め込む算段をする必要があるが一緒にいる姿は見られたくない。組のものを誰か迎えにこさせて万が一見られたくないものを見られるくらいなら、俺に無礼を働いた方が安全だとでも?
笑えるな・・・お飾り若様はどんどん地に堕ちるだけか。
「なにか?」
知らず笑っていた俺の顔を見た小菅は少し首をかしげた。
「いや・・・。まあ、いいけどさ。俺だけタクシーにつっこんで帰すって結構な無礼だよな。
桜沢に知られたらすっげ~怒られるだろうな、小菅。
桜沢は絶対こんな真似しない。それを思ったら笑えたんだよ。」
小菅は引き攣った頬の筋肉をピクピクさせた。
俺の言葉にムカっと来たのか?
桜沢にチクられた先を想像したのか?
「帰る。」
それだけ残してタクシーに乗り込んだ。
行き先を告げて座席にもたれる。この運転手さん、本家の前で止めて驚くだろうな。
ヤクザ宅に行くように見えないもんな、俺。
とりあえず面倒が済んでほっとしたせいか、身体が緩む。
そのまま目を閉じた。
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